月光の前奏曲 -第15番- (ページ38)

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６…side:You ページ38

堂々と、自信満々に言えば、
かわいそうな子を見るような目で私を見る水川さんに手を合わせる。

『ねぇ、お願い。手伝って』

「何度言われても同じ。
私は、景吾の力にはなるけど、
貴女の助けになるつもりはないわ。
景吾が関わるなと言うのであれば尚のこと」

　そう言い放った瞬間、予鈴が鳴れば
ティーセットを片付けてごきげんよう、と
彼女はスカートを翻し校舎へと戻っていった。

「玉砕、してもうたなぁ」

『乙女の会話覗くんじゃないよ忍足……
まぁ、そんな簡単に水川さんが動くとは思ってないよ』

「……どないするん？」

　一部始終を見ていたであろうどこからともなく現れた忍足と
凛とした姿勢で歩く水川さんの背中を見つめていた。

すると、スマホがLINEの通知音を奏でた。

『……ふはっ、』

「なんや、ついに頭おかしくなったんか」

　ひとりでにスマホを見て吹き出す私を、
忍足は少し引いた目で見ていて。

『いや、なんで金持ちって
皆こうも不器用なのかなって思って』

「……？？」

『てか、ついにってなによついにって』

　半歩後ろに立つ彼を肘で小突けば
忍足は大袈裟に脇腹を抑えてみせた姿を、
水川さん……もといLINEの送信主が
呆れたように微笑みながら見ていたのを
私達は気づくよしもなかった。