月光の前奏曲 -第15番- (ページ27)

今日:32 hit、昨日:15 hit、合計:17,669 hit

過去編【瞬間センチメンタル】side:You ページ27

3人の男と、1人の女が互いに向かい合って睨み合うこの部屋では
ピンク色の雪が舞う窓の外の世界とは
まるで別次元のような不穏な空気が漂っていた。

4月だというのに、額に流れる汗は
時間と共に落ちてくる太陽のせいか、
はたまた張り詰める空気のせいか。

　そこに、私たちの間に立つ1人の男がひゅっと息を飲んだ。

その音を聞いて、他の4人の瞳が大きく揺れる。

次の言葉を待つ4人はその手を大きく振りかざした。

「……ほな、いくで。せーーーのっ！！」

「……ぶわぁぁぁあぁぁあ！くやCーー！！」

「くそくそ、またAの1人勝ちかよ！！」

『よっしゃぁぁぁああああああ！！』

「ちくしょーー！激ダサだぜ！！」

「やるねーA。やればできんじゃん？」

「……一体今度は何の遊びをしてやがんだ」

　項垂れながら地面を叩く男2人は、
我が3Cのクラスメイト芥川慈郎と宍戸亮。

膝をついて頭を抱えながらこれでもかと仰け反る男は
我が校誇る身体能力の持ち主、向日岳人。

レフェリーがゴングを鳴らすごとく、
せーの！を言うだけの為に巻き込まれた
我がテニス部で1、2を争う色男、忍足侑士。

ソファで頬杖をつきながら傍観を決め込む
我が学園たってのおしゃれ番長、滝萩之介。

そして、
ガッツポーズを決めて全身で喜びを表現する私と上記4人を
冷めた目で見つめるは我が学園一の御曹司、跡部景吾。

　役者は揃ったと言わんばかりに新3年生が
集まる部室で繰り広げられる熱い戦いの幕の
火蓋が切って落とされたのはつい10分前の出来事だった。