月光の前奏曲 -第15番- (ページ24)

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２…side:You ページ24

少し間を置いた後、
そうかよ、と鼻で笑う彼は、いつもの跡部で。

この心配が、あの話が、ただの杞憂で終わればいい。
心からそう思った。

『それより！今日、元気なかったじゃん』

「……別にいつもと変わらねぇがな」

『嘘つけ。何年一緒にいると思ってんの』

　あんな、覇気のない顔してるアンタ久々にみたっての。

それなのに、気づかないわけがない。

「2年もいねぇくせに
俺様のこと分かったような口聞くんじゃねぇよ」

『……って、忍足が言ってた。だから六年ってことで』

　完全に後付けの言い訳をすれば、
鼻で笑う跡部はやっぱりどこか寂しげで。

夕陽に照らされる跡部の横顔が、目が。

いつもより影って見えた。

『私じゃ、役不足ですか？』

「何の話だ」

『皆の跡部くんのお悩み相談室、
本日のカウンセラーは私Aですが』

「……俺様に悩みなんてねぇよ。
ごっこ遊びなら忍足にでも付き合ってもらえ」

　くだらねぇ、と吐き捨てるように呟いて
背を向けて歩き出す跡部の姿は
少しでも触れたら今にも壊れてしまいそうなくらい儚く見えて。

『噂を、聞いたの』

　屋上の扉のドアノブに手をかける跡部に
声をかければ、彼の手が止まった。

『跡部に、水川さんじゃない、
違う婚約者が出来たって。
それで朝から元気なかったんじゃないの？』

　回りくどく言うことなく、核心をついた
言葉に跡部の視線はドアノブを捉えて固まったまま。

嘘だって、くだらねぇ噂だなだって、
いつもの調子で言ってよ。

　他になんでもいいよ。

跡部のこの先の人生が苦しくなるような理由じゃなければ
他に好きな人ができたって、
私が嫌いになったって、なんだっていい。

だから、お願い。

「……ハッ、見当違いもいいとこだな」