月光の前奏曲 -第15番- (ページ23)

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第五十九章【決勝スピリット】side:You ページ23

『そこのかっちょいいおにーさん、
こんなとこでなにしてんの？』

わざとヘラヘラしながら
跡部の横に立てば彼は私を見ることなく
無表情のまま口を開いた。

「屋上は、立ち入り禁止のはずだが」

『その立ち入り禁止の屋上で
仁王立ちしてる生徒会長さんに言われたくないんですけど……』

　いいじゃん別に。今日だけ特別。

小声で言えば、彼は肩を竦ませた。

『……ここから見ると、
人間がありんこくらいに見えるね』

「……そうだな」

『近くで見ると、私より大きい人も
ここからだとあんなに小さく見える』

「……」

『あ、がっくんと日吉くんだ。
でも、顔が見えなくても誰かすぐ分かるね。
ん？こっちに気づいた。あはは。
がっくんが飛び跳ねながら手振ってる』

「……あーん、なんだテメェは。
俺にセンスのねぇポエム読み聞かせにきたのか？」

　こっちにピョンピョン飛び跳ねながら、
手を振るがっくんに手を振り返していれば
跡部がこれでもかというくらい眉間に皺を寄せている、気がする。

がっくんに手を振っている私は
跡部の方なんかこれっぽっちも見てなくて。

イラッとした声色だけを聞き流していた。

『ポエムって……
ドラマみたいに夕暮れ時に黄昏てた男に言われたくないでーす！』

「じゃあ何の用だよ」

『ん？別にないよ。
校庭から跡部が見えたからきた』