月光の前奏曲 -第15番- (ページ14)

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１２…side:You ページ14

なんだもう簡単だったじゃないかと
適当に取り出した材料を仕込んでいれば、
興味を示した様子の彼がおもむろに私の後ろに立って
私の手元を覗き込んできた。

『ん？お腹すいた？ちょっと待って。
1時間もしないうちに作るから』

「や、そうじゃねぇ」

『え？』

「……なんか、いいなと思ってよ」

『いい？何が？』

　なんかいいと言った彼は
もしや私の作ろうとしたものが分かったとでもいうのだろうか。

なんだ、初めて食べるもんかと思って作ってたのに。

ちぇ、と口を尖らせた私の後ろから
料理が分かったはずの彼は動く気配がなくて。

まだ何かあるのかと材料を切る手を止めて彼に振り返れば
謎にニヤケている跡部を見て更に困惑した。

『なに？どした？なんでにやけてんのアンタ』

「……お前と結婚したら、毎日こんな感じなのかと思って」

『……へ！？』

　なんかいい。

その言葉の答えを出した彼は、固まった私を見て
満足そうに笑ってソファへ戻って行った。

　……いやいや。

結婚、って。流石に飛躍しすぎでしょ。

まだ付き合って間もないどころか、
なんなら告白すらされてないはずなのに
なんでプロポーズじみた言葉を掛けられなきゃいけないんだ。

　どこまでも順序吹っ飛ばしてくる彼は、
本当に私とは気が合わない。

それでも、2人の未来を見通せるようになった事を
示すその言葉に勝手に笑みが零れた。

あーあほんと。敵わんよアンタには。

勝手にテレビを見始めた彼を眺めながらも
作りあげた料理をダイニングテーブルへ並べれば、
匂いに導かれるように寄ってきた跡部は
呆然とそれを見つめていた。

　私が作ったのは、和食。

レンコンのはさみ揚げと、ほうれん草のおひたし。

ぶりの照り焼きに、豚汁、炊き込みご飯という
私からしたら豪華でしかない大奮発メニュー。

『……食べたことある？』

「……見た事はあるな」

『もんじゃの時もそんなこと言ってたねアンタ』