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3…side:You ページ10

まさに今、想いを伝えようとした相手が、
目の前に立っていたから。

跡部が、立っていたから。



『……あ、とべ。ど、したの?』



 足が、震える。

声も、震える。

伝えようと思ったのに、普通にすら話せない。

伝えなきゃいけないのに、顔も見られない。


 白々しく、どうしたのだなんて咄嗟に出てしまった言葉を
聞いた彼は小さくため息をついた。



「お前を、探してた」

『え? 探してた、って。なんか、用でもあった?』

「じゃなきゃ探さねぇだろ」

『あ、あぁ。まぁそうか。え? なに、用って』

「お前に、話しておかないといけない事がある」



 話しておかないと、いけない事。

話したい事でなくて、話さなきゃいけない事。


 今の今で、それを聞いてしまったら
もう、婚約者の話しか思いつかない。

やばい、なに泣きそうになってんの私。

泣くな。まだ、泣いちゃダメだ。


 唇を噛み締め涙を堪えながら、彼の言葉を待っていれば
予想外の言葉にいつの間にか俯いていた顔をあげた。



「昨日、約束したろ。優勝したらお前の想い人を教える、って」

『……想い人、って』

「お前が、ずっと探してた男のことだ」

『……あぁ。うん。そういえばそうだったね』

「んだよ、忘れてたのかお前」

『あ、いや。そういう訳じゃないんだけど。
まさか本当に教えてくれるとは思わなくて』



 正直、それよりなにより今はもう
アンタの事で頭いっぱいなんだってば。

でも、流石にそんなこと本人に言える訳もなく。

まぁ、告白しようとしてるんだから、
言ってしまってもいいのかもしれないけど
一応それが理由で入ってるし水を差すのは違う気がして。


 コクコクと頷いていれば入口に立っていた彼は
おもむろに私の目の前まで歩みを進めて私を見下ろした。

倉庫の窓から除くオレンジの夕陽に照らされた彼の瞳が
やけに綺麗に見えて目を逸らせずにいれば、
跡部は静かに微笑んだ。



「――――目の前にいるぜ」

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作者名:2ytluvuusham081 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/  
作成日時:2021年1月28日 13時

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