2…side:You ページ6
え、なに。どうしたの。
そう問い掛けようとした刹那、
ぶわっと見えない何かが襲ってくる感覚を覚えた。
……え、何、今の。風?
シン、と静まり返った会場に、
思わず顔を覆い隠した手を退けて空を見上げれば
キラキラと何かが降り注いでいるのが見えた。
真夏なのに、雪のようにも見えるそれに見惚れていれば
コロコロと足元に転がってきたボールが目に入って。
なんとはなしに拾い上げたそれを見て、ハッとした。
「……サービス、エース」
「って、ことは、」
「――――夢、見させてもらったぜ。幸村よ」
ポツリ、と隣のがっくんと鳳くんが言葉を零したと思えば、
コートに立つ跡部が、同じように言葉を零したのが聞こえた。
その瞬間、
審判のコールをかき消すほどの歓声が会場を沸き立たせた。
勝った。
跡部が、勝った。
氷帝が、勝って、
ついに夢が、叶った。
コートに駆け出したレギュラー陣に反して、
ここまで耐えていた涙が溢れて、その場にしゃがみ込んだ。
レギュラー陣どころか、
応援席にいた部員達までもコートに集まっていく姿を見て
更に込み上げてくる何か。
私も駆け寄って、おめでとうって、さすがだねって、
言いたいのに、涙が邪魔をして1歩も動けない。
何一つ言葉が出てこない。
縮こまって泣くことしか出来ない私を後目に、
挨拶を終えたレギュラーメンバーがベンチに帰ってきて。
私の姿を見るや否やクスクスと頭上から笑い声が降らせてきた。
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作者名:2ytluvuusham081 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時:2021年1月28日 13時