月光の前奏曲 -第12番- (ページ41)

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本当に、なんで好きになってしまったんだろう。
どこで道を間違えたんだろう。

　あぁ。きっとあの時だ。

引退試合が終わった後、
お前が御礼を言うべき人間は目の前にいると、
自分がお前の探し求めていた人物なのだと彼に言われた時。

その瞬間、付かず離れずの関係がいいだなんて
言えなくなってしまったんだ。

　叶わない、恋。

伝えてはいけない、想い。

行き場のない感情が、波と同じように
寄せたり、引いたり。

　そんな押し黙ってしまった私の隣に
跡部はいつの間にか歩み寄ってきていて。

バッと顔をあげれば、真っ直ぐと私を射抜く
夕陽に照らされる海のように綺麗な青い瞳と目があってしまう。

目が離せないでいると、彼は優しく笑った。

「お前、やっぱり俺様の事好きなのか」

『……は！？なに急に！？』

「あーん？違ぇのか？」

『ばっ、ばかじゃないの！？
ちっ違うに決まってんでしょ！！』

　自惚れもいい加減にして！と息をするように嘘をつけば、
焦る私を見て彼は勝ち誇ったように嫌味ったらしく口角を上げた。

「嘘つけよ、じゃなきゃ普通聞かねぇだろ。
婚約者がいるのかだなんて」

『そ、それは気になっただけ！！
部活の、なっ仲間として！！アンタだって言ったじゃん！
大事な、仲間だって。私だって、そう、思ってるから』

「仲間、ねぇ」

　穴があきそうなほど私の目を射抜いていた瞳を漸く外して
私と同じように塀に寄りかかり頬杖を付いた跡部は
含みのあるような言葉を残して海を見つめていた。

『なに、なんか言いたいことあるなら
言ってよ。モヤモヤするから』

「生憎俺は、お前のこと
仲間だなんて思ってねぇよ」

『……は？え？何？
さっき自分が言ったこともう忘れたの？記憶障害？』

「んなわけねぇだろ。あれは違ぇよ。
大事な仲間ってのはアイツらから見たらの話だ」

『……じゃあ、アンタは
私の事なんだと思ってんのよ』

「知りたいか？」