月光の前奏曲 -第12番- (ページ36)

今日:16 hit、昨日:11 hit、合計:19,431 hit

⑦side:You ページ36

カタコトで発した私の言葉に不思議そうな顔をするも、
彼は一瞬で車窓の外に見えるネオンを宿した街路樹に視線を移した。

彼の視線を追うように
イルミライトが忙しなく色を変えているのを見れば、
そのキラキラを勝手に縛り付けられる木々が
夜の街を連れ回される今の自分の姿に重なった気がした。

『……ねぇ』

「なんだ」

『本当に、これで良かったの？』

「アーン？どういう意味だ？」

『いや、だってこれすんごく高かったし、なんなら青じゃん』

　黄色の話はどこにいったのやら。

言葉の意味を理解した跡部は、ハンと鼻を鳴らした。

「お前が言ったんじゃねーか。
石に込められた意味で決めろって」

『確かに言ったけど……
じゃあこの宝石の意味ってなんなの？』

「……そんなの、テメェで調べな。
手に持ってるその機械はガラクタか？」

『ググれカスってか』

　ちくしょー。

どこまでも人を小バカにしやがる男だ。

無性に苛立って、それ以上口を開かずにいれば
いつの間にか家の前までついた。

『……じゃ。
いいクリスマスをお過ごしくださいませ跡部様』

「あぁ、お前もな」

　車から足を下ろした私に、
跡部はシートに肘をつきながら不敵に笑いかけた。

せめてもの嫌味をぶつけてやったはずなのに、
そんなのは屁とも思っていないようだ。

王を乗せて走り去るベントレーを
見送って家に入ろうと手元の鍵に目をやれば
指にひっかかったままのそれを見て全身の血の気が引いた。