��side:You ページ32
今一度言おう。
全くもって謎である。
何一つ理解出来ていない私が怪訝な顔を見せれば
トパーズもシトリンも気に食わないという意味と
履き違えたであろう彼は「次行くぞ」と
不機嫌さながらに言い放ちその店を離れた。
違う、違う。
そうじゃないんだよ。
言い返すことも出来ない不甲斐ない私を許しておくれ。
王に見放されたトパーズとシトリンに
酷く同情し後ろ髪を引かれるように
ふたつの宝石を見つめた。
トボトボだかスタスタだか、そんな効果音の似合う足取りで
颯爽と冷たい風を切って進む男の数歩後ろを歩く。
そこらかしこから聞こえるクリスマスソングは
どれも聞いたことのあるものばかりで
毎年毎年よくも飽きないものだと思う今日の私の思考は
これ以上無いくらいに歪み切っている。
あー、でもクリスマスって特番多いからなー。
早く家帰ってテレビ見たいな。
地面に転がる石ころを蹴る。
この石ころにはなんの恨みも罪もないが、
コン、とサイドジップブーツの先で蹴り飛ばせば
幾分か気分が晴れた。
初めて会った私に、蹴り飛ばされた石は
前を歩く王へ助けを求めるかのように
彼のサイドゴアブーツへと体当たりをかました。
石ごときの襲撃を受けてゆっくりと振り返った王の御顔は
これでもかと目を細めて私に睨みを効かせていたが
それでも淡麗なのに変わりはない。
腹立つ、腹立つ。
普通人間はその顔をしたらどんな美人だろうが
イケメンだろうが少しは不細工になるものだというのに。
そんな常識すら覆すこの男はまさに万物を
支配する王様という敬称が良くお似合いである。
苛立つ思考から現実逃避をするように
負けじと華麗に顔を背けてやれば
王から舌打ちのオマケを頂いた。
どうもありがとうございます。
「何故そんなに離れて歩く」
『一緒だと思われたくないから』
「この俺様と歩くのが嫌だってのか？
変わってんなお前」
『その言葉、そっくりそのままお返しします』
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作者名：2ytluvuusham081 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時：2021年1月28日 13時
