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その結果が、今に至るわけで。
俺は間違ってねぇ、と思う。
が、あいつも褒められる方法ではなかったと言えど
間違ったことをしたわけじゃねぇ。
それを先に伝えるべきだった。
よくやったと、まずは褒めてやるべきだった。
俺は、部長としていつだってそうしてきたのに
何故今日に限って気持ちが先行して
感情のままにぶつけてしまったのかは俺にも分からない。
何をこんなに焦って、何をこんなに悩んでいるのか。
今までこんなことは1度だってなかった。
あいつのこととなれば、
こんなにも頭も心も掻き乱されてぐちゃぐちゃになる。
どうしてもまとまらない自分の感情にむしゃくしゃして
その場にしゃがみながら、前髪をくしゃりと握り締めれば。
背後からジャリ、と誰かの足音が聞こえた。
「部長」
「……部長はもうお前だろ、日吉。何しに来た」
段々とオレンジ色に染まっていく海を見ながら
俺をわざと部長と呼ぶ日吉に答える。
「あぁ……そうでしたね。
もうただのOBなのか、アンタは」
「……なんだ、自分が部長になった途端
随分偉そうな口聞くじゃねーの」
その言葉の意図が全く分からず、
鼻で笑ってやれば日吉は無表情のまま言葉を続けた。
「……俺は、氷帝の頂点に君臨するアンタの姿を
この4年間、目に焼き付けてきた。
どんなときも、目標のためなら努力を惜しまずなんだってする、
そんな跡部さんを完膚なきまでに倒して、
俺がその座を奪ってやるってずっと思ってた」
俺を褒めたたえているようで
それだけではなさそうな日吉の言葉を静かに聞く。
「だけど現役中には1度も倒せることなく
アンタはまた引退になった」
「……」
「アンタは本当に負けず嫌いで、プライドばっか高くて、
口は悪くて、いつだって偉そうで、ナルシストで、
何言われたって余裕そうで、」
「……褒めてんのか貶してんのかどっちかにしろよ」
淡々と悪口と褒め言葉を混じえながら話す日吉に苦笑した。
否、9割方悪口だった気もするが、
返事を寄越さない日吉はまだ言い足りないようだ。
もうなんとでも言ってくれと口を噤んだ。
「でも、間違ってようが少数派だろうが、
自分の意見は絶対に曲げなくて言いくるめちまう。
それが、その強いメンタルがアンタの強さの秘訣なんだと思った」
「少なくとも、
俺が知ってる跡部“部長”はそんな男だった」
「……もう、部長じゃねえって言ってんだろ」
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作者名:2ytluvuusham081 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時:2021年1月28日 13時