月光の前奏曲 -第12番- (ページ19)

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７…side:You ページ19

『……でも、生きてる。
それに、私が行かなきゃ
今頃あの男の子はどうなってたか分からない』

「……っ、そうかもしれねぇが、
テメェまで死んだら元も子もねぇだろうが！」

『もー、うるさいな！
私がいいって言ってんだからもういいじゃん！！
そもそも私が死んだってアンタには痛くも痒くもないし、
関係ないでしょうよ！』

　イラッとしながら跡部の手を振り払い、
負けじと大声を出した後、ハッとした。

“お前も大事な仲間だろうが”

さっきの跡部の言葉がフラッシュバックする。

　跡部に婚約者がいるという根も葉もない噂を聞いて、
いくら荒んでいたと言えど、関係ない、は完全に言い過ぎた。

仮にも大事だと言ってくれた彼からしたら、
関係ない、訳がない。

　が、時すでに遅し。

発した言葉を取り消す術も知らない私は
突然黙って、何も言い返してこない跡部の顔を
ゆっくりと見上げた。

上げた視界の中で先程まで眉間にシワを寄せて
誰が見ても怒っていると分かったその表情は
複雑なものに変わっていて。

「……そーかよ」

『あの、跡部ごめ』

「もういい。勝手にしろ」

　それだけ言うと、謝ろうとする私の言葉も聞かず
1人でスタスタと歩いてどこかへ行ってしまった。

跡部は、ただ私の心配をして、
私のために怒ってくれていただけだと言うのに
なんてことを言ってしまったんだろう。

一時の感情に任せて飛び出てしまった言葉とはいえど……

“私が死んだってアンタには痛くも痒くもないし、
関係ないでしょうよ！”

『……あれはないわぁ……』

　自分の馬鹿さを実感しながら
濡れたTシャツが張り付いている不快感も忘れて
その場にしゃがみ込んだ。