5…side:You ページ17
私は、一目散に走り出していた。
後ろで、電話口から耳を離し、
おい待て! と跡部の制止の声が聞こえる気もするが
止まることなく無我夢中で砂浜を走る。
砂に足を取られ、
思うように進まない自分の体に苛立ちを感じる余裕もなく
男の子が立っていた岩場から
後を追うように躊躇いなく身を投げ出した。
太陽の熱にやられて火照っていた体は、
海水の冷たさで一瞬にして冷めていく。
バシャバシャ、と溺れ暴れていた男の子の体は
大量の海水を吸い込んでしまったせいか既にぐったりとしていて。
必死にその体を引き寄せて、近くの岩場に捕まるが
思いのほか砂浜が遠い上に足がつかないこの海の深さでは
男の子を抱えて泳ぐのは無理そうだった。
でも、早く引き上げてあげないとこの子が……
どうしたら――――
そう思っていた刹那、
近くの岩場まで跡部が近づいて来ていたのが見えた。
『……っ跡部!!』
その名前を呼べば、
察しのいい彼は手を伸ばし男の子を引き上げてくれた。
男の子さえ居なければ、砂浜まで戻ることは容易で。
足の着く位置まで泳いで、砂浜を上がっていけば
男の子が自分の足で跡部と一緒に歩いてくる姿が見えた。
すると、タイミングよく彼の両親であろう大人が走りよってきて
男の子を抱きしめていた。
私が姿を見るや否や、
御礼を言いながらペコペコと頭を下げる両親に笑顔で答えれば、
跡部が苛立った様子で口を開く。
「おい、アンタ達……」
『跡部』
今にも人を殺せそうなくらい鋭い瞳で
彼の両親を見ている跡部の前に立って彼の言葉を遮れば、
男の子がおずおずと私の前に来た。
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作者名:2ytluvuusham081 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時:2021年1月28日 13時