35段目 ページ10
店に入ってメニューを見た時、ふっと笑って彼女が指差した料理は、いつも萩原が頼んでいたものだった。
「っなんで、それ…」
「ん?」
なんでそれを選んだのかと掠れた声でたずねると、彼女は一瞬きょとんとした後、「合ってた?」と笑った。
「見た瞬間、これ研二くんが好きそうだなって思って、私も食べたくなったの」
その時の笑顔が、萩原と一緒にいる時の幸せそうなものと同じで。
ああ、この顔が好きだったのだと思い出した。
「お待たせいたしました!」と運ばれてきた二つのラーメンはアツアツで。
「いただきます」と声を揃えて口に運んだひと口目に彼女が再びふわりと笑う。
「美味しい。さすが研二くん。」
「ああ、アイツがここに通って一番美味いって食ってたのがそれだからな」
「萩原は〜 」なんて尽きることない思い出話と笑い声を響かせながら、ラーメンをすする。
彼女がこんな風に笑えるように、親友に代わって俺が支えてあげなければ。
いや、こんな風に笑う彼女の側に、俺が居たいんだ。
そう心に決めてまたひと口ラーメンをすすった。
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作者名:藍原春陽 | 作成日時:2019年10月31日 15時