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32段目 ページ7
「おい、生きてるか?」
そう毎日声をかけてくれる松田くんの存在に、次第に生きる力が湧いてきていた。
食事も、あの日から今までは自分が好きなものか楽に作れるものしかしなかったのに、
愛する夫の好きな料理を作ろうと思えるほどに、心は回復していた。
言葉に出すのはまだ勇気がなくて、つい普段通りに「私が好きな」なんて言ったけど、肉じゃがは彼との思い出の料理だった。
その日初めて声をあげて笑ってから、研二くんとの思い出は悲しいものより楽しいものの方が多いことに気づいた。
大好きな人との大切な思い出を、封じ込めてしまうのはもったいないと思えるようになる。
松田くんのおかげだな、なんて絶対言ってあげないけど。
この松田くんへの塩対応は、完全に研二くんの影響である。
「ありがとう」
まだ笑いの余韻が収まらない彼は聞き取れなかった様子で、
「なんでもない!」
そう笑って誤魔化した。
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作者名:藍原春陽 | 作成日時:2019年10月31日 15時