44段目 ページ19
天使の梯子を登った先、雲の上。
「あー、俺死んじゃったのか」
「ちゃんと防護服着とくんだった。」
「もっとAと居たかった。」
「あったかい家庭を作る予定だったのになあ。」
その男、萩原研二は現世への未練を垂れ流すが、もうそれを叶えることはできない。
「A、大丈夫かなぁ?」
妻を心配すると、何故かその様子を見ることができた。
取り乱している妻の姿に心を痛めて手を伸ばすも、届かない。
「クソッ!」
苛立ちも行き場なく消える。
親友が妻を慰めようとしていることに気づいて、見るのをやめた。
次に見た時には、妻の顔は少し晴れていて、親友と二人で食事をしているところだった。
梯子の上は時間の間隔が違うらしく、少し覗かない間に、現世の時間はあっという間に過ぎていた。
そうこうしているうちに、親友と再会した。
「…お久ー、陣平ちゃん。ありがとね、仇取ろうとしてくれて、Aを支えてくれて。」
でも、俺が死んだ日のことは許さないけどね!
数年ぶりに、取っ組み合いの喧嘩をした。…いや、そこまで激しくもない、ただの懐かしい戯れあいだった。
それからは二人でやつれていくAをハラハラしながら見守っていた。
あの日のように三人で笑い合える日は、すぐそこだった。
「A!」「柏崎!」
ーーーーーーーーーーーまた、会えたね。
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作者名:藍原春陽 | 作成日時:2019年10月31日 15時