40段目 ページ15
早いもので、萩原が死んでから4年が経った。
親友の仇を取ろうと、爆破事件等を担当する特殊犯係に転属を申し出たが、頭を冷やせと強行犯係に回された。
それが原因でイライラしていたからだろうか、家(つっても萩原家)でも少し荒れてしまっていた。
当たり前のように自宅の隣のドアを叩き、晩飯を食い、自宅で寝る。
「ありがとう」も無ければ笑顔も無い、そんな生活。
ただの友人との、当たり前で無いはずの日常にあぐらをかいていたと、今ならわかる。
「すまねえな、柏崎」
礼も言ってないし、仇も取れなさそうだと、四角に切り取られた空を仰ぎ見ながら一人つぶやく。
ゆっくりと空に近づく観覧車の中、俺まで居なくなることを許してくれと、願う。
本心は、今すぐ目の前のコードを切ってAのもとに行きたい。しかし警察官の一人として、その選択肢は選べない。
ふう、と心の葛藤を煙草の煙と共に吐き出した。
もう猶予はない。
好きだった、なんて親友の妻に対しては死んでも言えない言葉を呟きながら、メールを打つ。
今度こそお前が壊れそうで心配だ。
ー「萩原の分まで幸せにしてやれなくてすまねえ」ー
最期の謝罪は、誰に届くこともなく爆発音にかき消された。
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作者名:藍原春陽 | 作成日時:2019年10月31日 15時