6 ページ6
.
初恋は実らない。この言葉は本当だったみたい。
好きだなんて伝えない方がよかったのかもしれない。もう大学に行きたくないよ。
気まずいじゃん。
けれど、そんな心配などいらなかった。
彼は授業開始ギリギリに教室に入ってきて、私の横を通りすぎるとき平気な顔して「おはよ」と声をかけてきたのだ。
彼は私に告白をされたことなんか忘れてしまったのだろうか。少しも気にならないくらいどうでもいいことだったのか。
それからも彼は告白のことには触れず、講義で席が近くになったときもサークルのときも普通に私に接してきた。
少しも意識してもらえない。それが寂しかった。でも、これでいいのかもしれない。
近づきすぎたってどうせ相手にもしてもらえないならほどよい距離感で一人の友人として存在していた方がいいのかも。
そう思ったのに、
私は諦めの悪い人間だった。
失敗から何も学ばなかったみたい。
初めて告白をしたあの日から1ヶ月ほど経った日のこと。
その日はサークルの集まりがあって、私は次の日も1限があったため一次会で帰ることにした。
「待って」
その声が聞こえて足を止めた。
「俺も帰るから駅まで送ってく」
やっぱり彼の声だった。
「ありがと…」
優しくしないで。何度そう思ったことか。
彼に優しくされる度に好きという気持ちが増していくんだ。
きっと初めて告白したときよりも彼への気持ちは大きくなっている。
「もうすぐ夏だね」
「だね…」
綺麗な横顔を見上げてどうしようもなく好きだと思った。
何を言ったって、どう伝えたって無理なことだとは分かっているのに。
気持ちを止めることはできなかった。
「平野くん…ごめんね」
「え、なに？」
「私、やっぱり平野くんのことが好きなの…」
しつこくてごめんね。また好きって言ってごめんね。
「あの時、平野くんにフラれたって分かってるよ。でもね、この気持ちを消すことなんてできなくて」
彼から発せられる言葉を待っている時間が怖かった。
なんて言われてしまうんだろう。どうせなら前よりもっと強く断ってほしい。諦めがつくように。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1485人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
來(プロフ) - やんやんさん» とっても好きな作品と言ってもらえてとても嬉しいです(^^)切ないですよね…。これからも切ないシーンが出てくると思いますがお付き合いお願いします(>_<) (2020年10月6日 23時) (
レス) id: 77d7f96759 (このIDを非表示/違反報告)
來(プロフ) - munさん» 二人とも好きな人が原因で辛くなってるんですよね…。自分でも書きながら切な！！って思ってました… (2020年10月6日 23時) (レス) id: 77d7f96759 (このIDを非表示/違反報告)
來(プロフ) - 初子さん» はじめまして。ドキドキをお届けできているようでよかったです！ありがとうございます(TT) (2020年10月6日 23時) (レス) id: 77d7f96759 (このIDを非表示/違反報告)
やんやん(プロフ) - いつも涙ポロポロ出しながらぎゅーんと切なくなりながら見ています（ ; ; ）とっても好きな作品です。 (2020年10月6日 21時) (レス) id: 97979cb1f9 (このIDを非表示/違反報告)
mun(プロフ) - 44ページの最後、お互い苦しいでしょうね・・・平野君にとっても嫌だし、それを聞いてしまった夢主も嫌だろうし・・・なんだかとても切ないです。 (2020年10月5日 17時) (レス) id: 0e3b0babab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：來
| 作成日時：2020年9月16日 22時
