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どうして彼が私にそんなことを言ってほしいのかが分からなかった。
「A…」
「…す、き」
「紫耀すき…だよ、」
分からないけれど、私は好きだと言ってしまった。本当の気持ちを口に出しただけなのに泣きそうになった。
「ふふ、ほんと…Aってかわいい、ね…」
彼はとても嬉しそうに目尻を下げて笑みを作った。そして私の上唇をぺろりと舐めあげてそのまま舌を絡み合わせた。
その全てが気持ちよくて仕方なかった。
けれどそれと同時に虚しさでいっぱいになった。
彼が私に“好き”を返してくれないからだ。
分かってる。この人の好きな人は私じゃないなんてこと。でも、でも…嘘でもいいから言ってほしかったの。
それに、分かってしまったから。彼はきっと私からの“好き”を頭の中で変換して、自分の好きな人に言われたことにしている。だから私に言わせたんだろうな。
結局この日も事が終わるまで何度も彼に想いを伝えた。これじゃあ前と同じじゃない。
好きなんて言うのはあの日が最後のはずだったのに。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
頭の中がボーッとしたまま後処理をしている彼の背中を見つめる。
これ…夢じゃないんだよね？
頬をつねって現実だということを確認する。
「ふはっ。なにしてんの」
いつの間にか彼はこちらを見ていた。
そして私の隣に入ってくる。
「眠たいでしょ？寝ていいよ」
私の前髪を優しく整えながらそんなことを言うからだんだん瞼が重くなる。
「あ、待って一つだけ」
重くなっていく瞼を開ける。
「なに…？」
「もう俺のこと避けないでね…」
「それは…平野くんが私と関わりたくないかなって思ったから」
嫌な顔をされたら辛くなるから距離を置こうとしたんだよ。
「…変なこと考えないでいいから。
あと…平野くんじゃなくて紫耀」
「あ、ごめん…」
まだどうしても紫耀と呼ぶのには慣れない。
「俺がもしAと関わりたくないなんて思ってたら抱いたりしないよ」
「そっか…」
単純に嬉しかった。彼にとって私が邪魔な存在じゃなかったみたいで。
そう思うとなんだか安心してきてまた眠気が襲ってくる。
きっと私は間違っているし、こんなの普通じゃないと思う。
けど、彼の隣で眠りに落ちるこの瞬間が幸せとしか言い表せなかった。
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來(プロフ) - やんやんさん» とっても好きな作品と言ってもらえてとても嬉しいです(^^)切ないですよね…。これからも切ないシーンが出てくると思いますがお付き合いお願いします(>_<) (2020年10月6日 23時) (
レス) id: 77d7f96759 (このIDを非表示/違反報告)
來(プロフ) - munさん» 二人とも好きな人が原因で辛くなってるんですよね…。自分でも書きながら切な！！って思ってました… (2020年10月6日 23時) (レス) id: 77d7f96759 (このIDを非表示/違反報告)
來(プロフ) - 初子さん» はじめまして。ドキドキをお届けできているようでよかったです！ありがとうございます(TT) (2020年10月6日 23時) (レス) id: 77d7f96759 (このIDを非表示/違反報告)
やんやん(プロフ) - いつも涙ポロポロ出しながらぎゅーんと切なくなりながら見ています（ ; ; ）とっても好きな作品です。 (2020年10月6日 21時) (レス) id: 97979cb1f9 (このIDを非表示/違反報告)
mun(プロフ) - 44ページの最後、お互い苦しいでしょうね・・・平野君にとっても嫌だし、それを聞いてしまった夢主も嫌だろうし・・・なんだかとても切ないです。 (2020年10月5日 17時) (レス) id: 0e3b0babab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：來
| 作成日時：2020年9月16日 22時
