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あの日が嘘だと言われれば信じてしまうくらい、それからの阿部くんはいつもの阿部くんだった
まあ、私もいつものグループに戻ったし、阿部くんだってわざわざ私に会うようなことはせず、程よい距離感を保ったまま私達は卒業した
それから私は地元の大学に通い、そこで出会った旦那と大学を卒業してすぐに結婚
その1年後くらいには雄太も産まれ、世間一般とやらをよく知らずにどうにか母親をやっている
そんな中、阿部くんの事はネットニュースなんかで時々目にしていた
大学入学を機に躍進する彼の姿は、やっぱりあの雨の日の彼からは想像できず
ただ、この金木犀が咲く時期だけは、阿部くんと過ごした一時を思い出してみる
大人になった今だから分かるけど、もしかしたらあれはお互いの恋心だったんじゃないかって
答え合わせは出来ないけれど、それは今となっては、良かったなと思える話
私と阿部くんの選択は、きっと正しくはないけれど、間違ってもいなかった
だから、そんな中でこうして彼に再会できたことは、もしかしたらプルースト効果による視覚効果か何かかなんて
わざわざそんなことを考えてみたけれど、隣で笑っている彼は、高校生の時から変わらず、やっぱり阿部くんだった
「かわいいねー、今、何歳？」
沈んでいた意識が、その一言によって浮かび上がり、慌てて取り繕うように言葉を探す
阿部くんは柔らかな笑みを浮かべたまま、私の隣、ベンチに腰掛けて正面を見ている
習うようにその視線を追えば、植物園の片隅にある公園で、一人で遊ぶ雄太の姿
「3歳になったよ」
「そっかー。自分の同級生に子供がいるとか…何か不思議だ」
横目で私を見た阿部くんは、その笑みを深くした
「漸く、俺の気持ちにも踏ん切りがついたな」
そうポツリと呟いた阿部くん
私を見て、いたずらに微笑んで、その言葉の意味を探し倦ねていると、彼の前髪を柔らかな風が揺らす
鼻孔を擽る金木犀の香り
阿部くんとほぼ同時に頭上を仰いだ
そこには金木犀なんて見当たらなかったけど、あの頃を思い出すには十分だった
「金木犀の開花時期って、いつか知ってる？」
「え？10月末とかじゃなかった？」
「そう。でも、中では二分咲きなんてのもあってね」
「へー、知らなかった」
そこで深く深呼吸した彼
「もう時効だから。これはどこにでもいる普通の男子高校生の話。じゃあ、答え合わせをしようか」
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なむる。(プロフ) - You∞さん» コメントありがとうございます！まさかそんな運命的なことが…この小説を通して私も素敵なお話に巡り会えて嬉しいです(・∀・) (2021年1月16日 19時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
You∞(プロフ) - はじめまして。自分の身近に起きたことに似ていて、びっくりしました…ただ私の場合は、私も彼も独身で、答え合わせは同窓会でしたが(笑)。このお話を読んで、あの頃の私は本当に彼が好きだったと、改めて気づきました。ありがとうございました。 (2021年1月16日 10時) (レス) id: ef0b5894b5 (このIDを非表示/違反報告)
なむる。(プロフ) - コメントありがとうございます！大人になっからこそ分かる感情だったり、幼いからこそ答えを出せなかった恋心ってのをテーマにしてみました^_^頑張ります！ (2020年9月16日 7時) (レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - 今回のは少し切なめ？なんですね。亮平くん、本当はまだ好きだったってことでしょう？まあ初恋は叶わないって言いますからね。とにかく面白かったです。素敵なお話ありがとうございました。これからも頑張ってください。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)
なむる。(プロフ) - 詩乃さん» コメントありがとうございます！ただただ嬉しいの一言です:-) ちょっとしたワンシーンにもこんな素敵な言葉が頂けて…楽しんでいただけて嬉しいです！ありがとうございます (2020年8月19日 5時) (レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2020年8月6日 12時
