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耳元で何度も名前を呼ばれた
いつもあんなに優しいくせに、私を抱きしめる腕はちょっと乱暴だ
「…涼太、」
私がたった一度そう声を出した
多分数日ぶりに出した声はひどく嗄れていて、それが私の声だなんて思えなかったけど、涼太はゆっくりと身体を離した
涼太の大きな手が私の両頬を包む
「馬鹿、何やってんだよっ」
感情をあまり表に出さない彼だけど、今はとても怒っている
彼に全部を打ち明けたかった
彼を怒らせることが何よりも私自身を苦しめるから
でも、それは彼にとってあまりにも酷なこと
私は何の言い訳もできず、そっと彼の手から逃れた
でも、それを彼は許さなかった
涼太の手が私の腕を掴んだ
「言って、」
涼太の真剣な、苦しそうな、真っ直ぐな瞳が私を捉える
「助けて、って」
私はきっと、誰かに助けてもらいたかった
「言って」
自分一人じゃ上手に抱えられないものを、少しだけ、手放したかった
「…涼太、助けてっ、」
グッと引き上げられた力で漸く立ち上がるものの、足に力が入らなかった
自分の身体すらコントロールできなかった
何より、私はここで佐久間さんを待っていないとって
まるでそれが宿命かのように
でも、涼太の腕に抱えられて数日ぶりに外に出た瞬間
逃げられた
それに少しだけ安堵した自分が居た
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なむる。(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます！この作品自体を美しいと言っていただけること…これ以上に嬉しいことはないです！また新しい作品でも出会えること願ってます。ありがとうございます！ (2021年2月10日 6時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 凄いという言葉しか出てこない、語彙力の無い自分が恨めしいです。セリフや文章表現の仕方など、とにかく美しい作品をありがとうございました。 なむる。さんの作品が大好きなので、これからも応援しております。 (2021年2月10日 1時) (レス) id: bdef6e19e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2021年1月14日 22時
