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あの不思議な共同生活が始まってから一ヶ月とちょっと
彼が帰ってこない日があった
大学から帰って気付いた
朝、家を出たそのままの空間から、佐久間さんだけが居なくなっていた
朝ごはんの食器も、干したままの洗濯物も、脇に寄せられた漫画も
今朝見た光景と何ら変わらないのに
佐久間さんだけが居ない
こんなことはしばしばあった
その度に私は怖くなった
執着心は、私だって何倍も膨れ上がっている
もうこの時には、私にとって佐久間さんはこの空間の一部だったし、心の一片だった
そう思っていたのは私だけ
それを毎回思い知らされる
家の中を片付けて、佐久間さんにメッセージを送る
それだけで、私はもう手を尽くしてしまう
一人で一杯一杯だった心の隙間は、いつの間にか二人分になっていて
その隙間から大切な一つが零れ落ちると
自分は天涯孤独だなんて絶望する
私は、ここに居る佐久間さんのことしか知らない
彼がここから出て行ってしまえば、それはもう赤の他人
こんなにも、彼を知らないのに、その全てを手に入れたように感じていた
そんな日は、ご飯は喉を通らなくなるし
お風呂だって入る気がなくなる
眠ると彼が帰ってきたときにおかえりって言えないから
佐久間さんがよく座っているリクライニングソファに、三角座りをしていつまでも待った
一向に鳴らない携帯を何度も何度も確かめて、唇を噛んだ
うつらうつらしながら迎えた朝も、佐久間さんは帰ってこなかった
大学に行かなくてはいけない時間になっても、それは無駄なことに思えた
電気すら付けていない部屋は明るくなり、やがてまた暗くなり
そんな日が数日続いた
その間、私は人として機能していなかった
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なむる。(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます！この作品自体を美しいと言っていただけること…これ以上に嬉しいことはないです！また新しい作品でも出会えること願ってます。ありがとうございます！ (2021年2月10日 6時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 凄いという言葉しか出てこない、語彙力の無い自分が恨めしいです。セリフや文章表現の仕方など、とにかく美しい作品をありがとうございました。 なむる。さんの作品が大好きなので、これからも応援しております。 (2021年2月10日 1時) (レス) id: bdef6e19e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2021年1月14日 22時
