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「Aちゃん、お待たせ〜」
舞台が終わり、そのまま佐久間さんと待ち合わせをしていた
小劇場の裏口から数人のスタッフらしき人物が出てきて、その人たちからの訝しむ様な視線をぎこちなくかわして
数十分も待っていれば私服に着替えた佐久間さんが出てくる
自分の背筋が無意識に伸びるのを感じた
「大丈夫ですよ、じゃあ…」
「行こっか、どっち？」
私が歩き出せば、慣れたように佐久間さんは歩幅を合わせて付いてくる
小劇場からの夜道を二人で歩いた
涼太以外の人を自宅に案内するのは初めてかもしれない
そんなことを考えつつ、自宅に向かって進んでいく自分の足を見下ろしていた
街灯に照らし出されては消えていく私と佐久間さんの影をチラチラと気にしつつ
隣の佐久間さんは何も言わない
ただ、私の進む道に付いていくように
このまま、限りなく歩き続けても、ずっとこの夜道には終わりがないような気がして、明けない夜がありそうで
でも、それを知りながら彼は黙っているようで
二人でいるのに、妙に孤独だと思った
本来だったらバスで向かう距離だけど、随分と長い距離を二人で歩いた
疲れが出てきた頃、漸く見慣れた風景があり自宅のマンション前に着いていた
いつも涼太はこのエントランスまでしか立ち入らないけど、私がオートロックを解除して入り口を通れば、佐久間さんもその後に続く
簡単なことだった
でも、それは彼への裏切りだった
エレベーターに乗り込んでボタンを押す
グンって掛かる重力を感じつつ増えていく階数表示を見上げていると、隣に立っていた佐久間さんがクツクツと笑う
私よりちょっと身長の高い佐久間さんを見上げた
「何ですか？」
「んーん、女の子の家って緊張するなーって」
「私も、緊張します」
「あらら、」
何か物言いたげな表情だったけど、無機質な合図と共にエレベーターのドアが開いたから、その話は有耶無耶なまま
エレベーターを出れば、すぐに玄関前に着く
鍵を開けるとき、一瞬戸惑った
でも、もうそれは遅いような気がして
カチャリという私の心とはまるで正反対な軽快な音を立ててドアが開いた
「どうぞ、汚い部屋ですが」
ここで出てくる社交辞令のような言葉に自分で恥ずかしくなったけど、肝心の佐久間さんは何も言わず、私のあとに続いて玄関を上がった
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なむる。(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます！この作品自体を美しいと言っていただけること…これ以上に嬉しいことはないです！また新しい作品でも出会えること願ってます。ありがとうございます！ (2021年2月10日 6時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 凄いという言葉しか出てこない、語彙力の無い自分が恨めしいです。セリフや文章表現の仕方など、とにかく美しい作品をありがとうございました。 なむる。さんの作品が大好きなので、これからも応援しております。 (2021年2月10日 1時) (レス) id: bdef6e19e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2021年1月14日 22時
