狂おしいほど紺碧を刻み【渡辺翔太】-2- (ページ9)

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目を開けると、目の前には真っ白な天井

ソファの背凭れから頭を離し、彼女の方を見た

彼女はソファの上で足を抱え、こちらに身体を向けている

光を写さない真っ黒な瞳が俺を見据えていた

「ごめん、酔ったみたいだ」

先に視線を反らしたのは俺の方

空っぽになったワイングラスをローテーブルに置くために身体を起こす

でも、それよりも先に彼女が俺の太腿の辺りに触れた

俺の間抜けな声と共に、彼女の身体が前のめりになった

薬研さんの唇が、ぶつかるように俺のソレに重なったのはほんの一瞬

今、彼女の瞳に映る俺はどんな顔をしているのだろうか

恐らく、これまでにないほどに間抜けな顔だ

彼女の温もりも、その感触も、匂いも、

確かめる暇もない、文字通りの一瞬

至近距離で見つめあい、もっと彼女を確かめたいと思った

彼女の艶めかしい唇に、今度は俺から口付けた

彼女の背中をソファの背凭れに押し付け、その腰にそっと触れた

彼女の手は俺の首に周り、細くて白い脚は俺の太腿の上に投げ出される

最初は唇を合わせるだけ

でも次第にそれは深くなって、彼女の上唇と下唇を軽く噛み、その熱い口腔内に舌を伸ばした

ゆっくりと絡められるソレ

お互いの体温よりも高いソレにより、俺達の体温が同じところまで高くなっていくのを感じる

そっと目を開けて確かめれば、陶器のような白い肌と僅かに紅く染まる頬

閉じられた目は緩い線を描き、長いまつ毛が頬に影を落とす

美しい人だと思った

そんなことに現を抜かしていたら、見抜かれたように彼女はキスを深くした

まるで生き物のように這うソレに飲み込まれそうで、俺の口からは俺でも聞いたことのないような声が漏れた

恥ずかしくて顔を離すと俺達の唇を銀の糸が繋いでいて、それを断つように彼女の唇にもう一度軽くキスをした

冷静になった頭ではこの脈絡のない行為に戸惑い、俺は自分の顔を覆ってソファに倒れ込んだ

足元の方で、彼女はケタケタと笑っている

「んだよ、」

「んーん」

指の隙間からそちらを伺うと、ソファの反対側に蹲った彼女がこちらを可笑しそうに見ていた

「宮舘さん、優しいのね」

そう言ってクツクツと笑う

光る口唇に思わず目を奪われ、反らす

「化け物、か」

息もできないような口付けだった

喰われるのは、俺か、貴方か

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