狂おしいほど紺碧を刻み【渡辺翔太】-2- (ページ22)

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閉じていた目をゆっくりと開けた

暗闇の中の翔太は目を開けて私の方を見ており、その手は優しく私の頭にのせられている

彼の口角が柔らかく弧を描いた

「大丈夫も、心配ないも、いらないからさ、
傷付いたり、痛くなったり、苦しくなったら、俺を呼べよ。
それを約束してくれないと、俺はお前から離れられない」

愛って、面倒で、重くて、厄介で

でも、私達の間にはちゃんと温もりを持ってそれが存在していた

当たり前の事実なのに

どうして、私はこれが愛なのだと認識できないのだろう

出来ていたら、私達の今はもう少し変わっていたのだろうか

ほら、また、こんなにも息が苦しい

すると黙る私に嫌気が差したのか、翔太の手が私の腕を掴みグイッと引き上げる

思わず翔太に覆い被さるような形になり、慌ててソファの背凭れに手をつく

翔太の手が私の腰にまわされた

至近距離で見下げる翔太の顔

まるで、拗ねた男の子

「ねえ、返事」

「…約束、する」

「よし」

翔太は私の言葉を聞くと表情を柔らかいものにした

「…隣、来て」

不器用なお願い

彼の手に誘われ、半ば強引に彼が眠るソファに私も身体を横たわらせた

狭い空間だから、必然的に二人の距離は近く、触れた彼の胸から心音が聞こえた

その速さは、どちらのものなのか分からない

「今日くらい、良いでしょ」

それが何の基準かは定かではないけれど

ただ、翔太の冷たい手が私の服の下に忍び込み、背中の溝を撫で上げ、耳元で彼の吐息を感じた

翔太の中に蹲る私に向けた感情ってやつ

それは言葉ではなくともこうして私に向けられた

明確な形と成るのはいつからの話だろうか

そこにあのいつもの気怠さは存在しなかった

それを手繰り寄せたのは私だと思う

それ以上、私達が触れ合うことも、話すこともなかった

夜が更け、日が昇り、時が進む

その感覚を微かに感じながら、私達はお互いに、あと少し、もう少し、と息を潜めていた

もう少し、沈んでいたかった

私と、翔太

二人の空間は

不完全で、

守られた場所だった

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