狂おしいほど紺碧を刻み【渡辺翔太】-2- (ページ21)

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コポリ

コポリ

私が口を開けば、そこから気泡が漏れるように

「笑わないで、聞いてね」

私の小さな小さな声が、不鮮明に流れ出す

どうか、彼には聞こえないでと

「時々、私は死ぬかもしれないって思うときがあるの」

ゆっくりと彼が眠るソファに凭れ掛かり、目を閉じた

お互いの息遣いだけを感じた

「高校の授業でさ、聞いたよね。残酷な実験の話」

その昔、ローマ帝国時代に行われた赤ん坊に対する実験の話を、道徳の授業で聞いた

酷く傷付いた顔をするクラスメイト達の中、私は自分の中に存在していた阻害因子を形を持って知った気がした

「なんて言ってたっけ、人には『言葉』と『スキンシップ』、つまりは『愛』が必要だ、かな」

もう何年も前の話だ

何処からが現実で、何処からが想像の話かなんてもう分からなくってしまった

「その時からなの。漠然と、自分が死に近い存在のような気がする
正しい愛を知らない私は、一体いつまで生きられるのかなって」

拗らせた人間だって笑われるかもしれないけど、その時の私にとってはそれが現実で、結果で

それを間違っているよって言ってくれたのは

「翔太、貴方が居なかったら、私は誰から愛を貰えば良いの」

散々、貴方からの眼差しを知らないふりして、意味を消して

それでも、貴方が私に向けてくれたもの

それが愛だってこと、知ってるから

我儘な奴だと思う

知っていて尚、私と貴方が共に居る理由を"友情"で片付けていたのだから

でも、その愛という形は言葉として知っている

私は貴方が居て、ここに居られた

生きることを否定されなかった

「ねえ、また話そうよ。何処かに一緒に行って、なんてことない事で馬鹿みたいに笑って、それから、」

ふと、頭に重みを感じた

ゆるりと髪を撫でられる感覚

酷く心地よくて、とても息苦しい

「お前は、十分に愛を知ってるよ。一人じゃないってことも、知ってるよ」

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