狂おしいほど紺碧を刻み【渡辺翔太】-2- (ページ12)

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you side.

振り返って、宮舘さんが去っていく背中を少しだけ見た

今日のあの瞬間、一つ一つにどれだけの意味があったのかは分からない

私達の明確な関係性だって分かっていないのに

けれど今まで見ていた彼の表面の姿だけではなく、知ってしまった引き換えとする弱さ

同情だとか言われればそうなのかもしれないけれど、そうするならば私が彼に向ける感情の理由は説明出来なくなるから

知っていけば良いのだと思う

彼となら、知っても良いのだと思いたい

再び視線を戻すと翔太がエントランスにぽつりと佇んでいた

ラフな恰好の翔太に駆け寄ると、エントランスの明かりに照らされた彼は渋い顔をしていた

「どうしたの、会えないって言ったのに」

「お前が一方的に言っただけだろ」

突き放したような言い方、冷たい声に思わず口角が引き攣る

一瞥した翔太は目を逸らすと、乱暴に髪をくしゃりと掴んだ

「それは、…ごめん」

「何、男でも出来たの」

私の話なんて聞いていないような口振り

翔太の視線は私の後方に向けられていて、もうそこには居ないであろう彼の背中を写しているようだった

私にとっては嫌な部類の笑い方をする

彼から、そういう風に言われたくなかった

酔いが回っていた

普段だったら気にしないようなことやちょっとしたことだって、簡単に理性という蓋は外れて要らないことをペラペラと話し出しそう

だから自分を落ち着けるように口を噤んだ

それが逆に翔太にとっては誤解を招くものだったのだろう

一瞬、酷く傷付いたような顔をした

翔太の瞳に陰りが見えた

「お前、あんま男誑かすなよ」

「は、」

「思わせ振りな態度取って、我儘じゃね？」

翔太は下手くそに口角を歪めた

翔太の口から出る本心ではないと願いたい言葉と、私の中で湧き上がる怒りとでめちゃくちゃ

「男一人のことだってまともに取り合わないくせに」

同窓会の日、深澤に言われた言葉をふと思い出した

そして泣きたくなった

何だか今日は、ちょっと、駄目だ

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