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Miyadate side.
父さんと義母は籍だけ入れて、結婚式は挙げなかった
籍を入れてから一ヶ月くらいの秋口に、義母は俺と父さんの家に引っ越してきた
休日の合間を縫って行われた引っ越し作業には、叔母と、その娘、Aが駆り出された
あの挨拶の日、初めて出会った時以来の再会になる
俺だって認めたくないものとか、変なプライドがあって、あのとき感じた感覚には知らないふりをしていたのに
玄関で向かい合った瞬間から、もう何かが動き始めていた
たった一人分の荷物の搬入作業だから対したものでもないけど、皆はそれぞれ楽しげに会話をしながら作業を進めていた
対して俺は居所が悪く、義母が持ってきた多くも少なくもない本を、リビングの本棚に並べていた
「おい、涼太ー。ちょっとコンビニで甘いものでも買ってきてくれ」
いつの間にか後ろに立っていた父さんが俺に財布を渡しながら言ってきたのは、もうお昼をとっくに過ぎた時間だった
「そんな、そんな！気を使わなくて大丈夫ですよ！」
そこに待ったをかける叔母と、暫く押し問答を続けていた父さん
折れた叔母は、代わりとばかりにAを俺に押し付けてきた
困ったように笑う彼女に、俺はまた視線を逸らすしか出来なかった
家の近くのコンビニまで、Aは黙って俺の後ろを着いてきていた
こういう時、何か上手い言葉でも言えたらいいのに
つくづく自分の口下手さには呆れる
コンビニでは適当に見繕った甘いものを買い、また来た道を戻るだけ
コンビニでも、ここでも、彼女は一切口を開かずに俺の後ろを歩くだけ
俺だって振り返る勇気もなければ、何か話しかける理由もない
家まであと少しってタイミングで、前を通る交差点を老夫婦が横切った
婦人は車椅子に乗っていて、それをご主人が押している
あっ、て思ったとき、婦人が被っていた帽子が風にのせられてハラリと足元に落ちた
ご主人は知らず車椅子を押し続けていて、婦人の白い手が宙をふわりと彷徨う
俺が走り出そうとしたとき、それよりも先に彼女が動き出していた
俺の横を駆け抜けた彼女は婦人の落とした帽子を手に取り、老夫婦の元へ駆けていく
漸く立ち止まったご主人に帽子を手渡し、不思議そうな顔をしているその人に何度も頭を下げている
いくつか言葉を交わしていた老夫婦とAは、また会釈をし合って、彼女はこちらへ帰ってきた
俺の方に向けた視線は、相変わらず照れくさそうだった
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なむる。(プロフ) - 雪の王子様さん» 私が出した全ての作品に、本当に素敵なコメント下さって！！ありがとうございます^_^彼らの素敵な姿を描けたらな…頑張ります！ (2020年9月16日 7時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - さっくんでてきた！なんかすごい展開の予感…更新頑張ってください。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2020年8月23日 23時
