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佐久間さんは私を見つめたまま、音に合わせてゆっくりとこちらに手を伸ばした
指先まで凛としている
柔らかな仕草の中に一本軸があるような
優しさと荒々しさの両局面を持っているような
ふと上がった口角
そこには、私の知る佐久間さんなんて居なかった
彼はまさしく、今この瞬間、舞台に生きる一人の人間だった
ひらりと逸らされた視線はやがてぐるりと宙を舞い、彼は緩やかな旋律と共に踊りだした
バレエのような美しいターンも、天に憧れたようなジャンプも
音に沿わせた美しい体の曲線も、その物語をこちらに伝える指先の丁寧さも
ここに居る皆がその彼の踊りを、一瞬の変化を見逃さないようにって
彼がこの場を支配してしまった
数多くの観客も
私も
やがてピアノの音は激しくなり、彼の鬼気迫る表情も、踊りにもそのスピードが増す
舞台を縦横無尽に走り抜け、そうと思えば地を這い
荒々しい踊りの中で、それでいて切なさを思わせる
何度も何度も地に押し付けられ、それでも何度も立ち上がり、また美しく舞う
彼の息が上がる
とても苦しい
流動的に流れ続ける音楽がふと止まる
彼の動きも同時にピタリと止まった
観客は、その一瞬すら見逃さないように
もう、私と彼は一心同体
彼の胸が大きく動き、やがて無音の世界で彼は再びゆっくりと動き出す
彼自身の身体を、魂を全て表すように
ダイナミックに
かつ繊細に
紡がれていく一挙手一投足が、今にも泣き出しそうな表情が、セリフのない彼からのメッセージだった
彼が大きく飛んだ
白い天に向かって手を伸ばした
ひらりと地に足を付き、くるりとターン
まるで人魚みたいだ
彼が描いた放物線に合わせて舞う衣装
裸足の両足が地をしっかりと捉え、彼の腕が全てを抱きこむ
その瞬間
ﾊﾟﾝｯ
短い銃声
ハタリと倒れるその身体
再び暗転した世界
ああ、行かないで
どうか、まだ舞っていて
何処かから鳴り出した拍手なんて、現実に戻してしまうようで
流れる涙を拭うこともできず
私は指の一本すら動かせなかった
ただ、ただその美しさに思いを馳せていた
あまりにも、その世界が完璧だった
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なむる。(プロフ) - 雪の王子様さん» 私が出した全ての作品に、本当に素敵なコメント下さって！！ありがとうございます^_^彼らの素敵な姿を描けたらな…頑張ります！ (2020年9月16日 7時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - さっくんでてきた！なんかすごい展開の予感…更新頑張ってください。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2020年8月23日 23時
