31. ページ31
Miyadate side.
Aのバイト帰りに落ち合って、夕食を食べる習慣が作られた
それはなんてことの無い日常であって、それでいて俺の精一杯の距離のとり方
周囲の目からしたら、俺とAの関係は異常なのかもしれない
でも上手く口裏を合わせたこの表面上の関係を、罪だなんて言う人はいない
随分とご都合主義な話だよな
いつもだったら食事をする場所で落ち合うのだけど、今日はAのバイト先の近くに用事があったから、ついでとばかりに迎えに来た
もう見慣れた風景の中、教えられた本屋の裏口とやらに回り込むと、丁度見慣れた背中があった
その姿に胸が跳ねるってほどもう初心な気持ちは持ち合わせてないけれど、その背中の向こうにもう一つ男の背中を見つけて、喉の奥の方がキュッと締まった気がした
「あ、はじめまして。佐久間です」
Aの名前を呼ぶと、その男が人の良さそうな笑顔を浮かべて挨拶をしてきた
まるで、俺とは真反対のところにいるような人
Aは何かとこの佐久間って男のことを口にすることが多かった
別に深く追及するつもりも、必要もないと思ってたけど
いざその佐久間さんが現れると妙な現実となって、Aの知らないその姿にずるいと思ってしまった
「あぁ、貴方が。宮舘です。Aの従兄弟です」
悔しかった
俺とお前を表す常套句として、こんなことしか言えないこと
早く立ち去りたかった
俺が知らないAを知っている、この人の前から
Aが見付けた洋食レストランのテーブル席
目の前に座るAの怒りは意外とすぐに収まり、今は目の前でナポリタンを食べている
顔一杯に美味しいもの食べてます！て笑顔を浮かべているAに対して、モヤモヤがずっと残っているのは俺の方
彼女にっていうよりも、佐久間さんに
らしくないって言われればそうだけど、仮にもAのバイト先の先輩で、どういう理由であれ大人気なかったのは俺
「落ち込んじゃった？」
「ん、」
Aの突然の問いに、俺は疑問とも肯定ともとれるような間抜けな返事をした
「私、あまり言わない方が良い？その、佐久間さんとかとの話」
彼女にも、気を遣わせてしまった
俺とAが一緒にいられる、たった一つであり不変の言い訳に、これじゃどう説明をするんだ
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なむる。(プロフ) - 雪の王子様さん» 私が出した全ての作品に、本当に素敵なコメント下さって！！ありがとうございます^_^彼らの素敵な姿を描けたらな…頑張ります！ (2020年9月16日 7時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - さっくんでてきた！なんかすごい展開の予感…更新頑張ってください。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なむる。 | 作成日時：2020年8月23日 23時
