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春が過ぎて、夏が来て、気付けば秋というよりも冬に近くなった今
今日はちょっと疲れたなって
エッセイ本と哲学本を買って行ったあの常連さん
そんな常連さんに意味深な視線を向けた佐久間さん
結局あれから私は佐久間さんに対してどっちつかずの感情を抱きつつ、好きですよの言葉はそこら辺に転がったまま
妙に固執した残像が私の肩を凝らせる
涼太とは、あの春の日から少しずつだけど共に過ごす時間が増えた
あの頃よりも意味が込められた視線だって、気付かないフリを続けて
終業時間が近付いて、レジ締め作業を佐久間さんと共に黙々と進める
売上計算して、現金過不足0を確認してふぅ、と同時に息を漏らした
そこから流れるちょっと解けた時間
この時間が好きだったりする
お疲れ様でした、なんてバイトスタッフが帰って行く中、佐久間さんは事務所の長机に腰掛けてダラダラと携帯を弄っている
着替えを済ませた私は、事務所を抜ける途中で足を止める
今日は、バイト終わりに涼太とご飯に行く予定だった
バイトが終わった旨をメッセージで送るとすぐに既読がつく
「なぁに、ニヤニヤして」
隣から声がしてそちらに顔を向けると、机に伏せたままこちらに顔を向ける佐久間さん
「見ないで下さい」
「じゃあ、ニヤニヤしないでくださぁい」
そう言いながら、キャアって顔を覆う佐久間さん
何だそれって笑ってたら、佐久間さんが指の隙間からこっちを覗いていた
「Aちゃんの好きな人？」
意地悪な聞き方をする人
「この世に存在する人を好きか嫌いかで分けるなら、好きな人です」
「ずるーい」
そんな言葉と共に、佐久間さんの持つ携帯が軽い電子音を鳴らす
弾かれたようにそれを見た佐久間さんは、この上なく柔らかい表情になる
秘密主義者の、誰にも見せない一瞬
「佐久間さんの好きな人ですか？」
意地悪なことを聞いた
彼にはこういうことを聞かないほうが良いのかもしれない
勝手にそう思っていた
「そうだよー、好きな人」
そう悪戯に笑って答えてきた
それは、私の返しを踏まえてなのか
ただ、それ以上は深く聞くなって
彼の口よりも饒舌な瞳がそう言った気がして私は黙り込んだ
貴方がそんな目をする人、あの人くらいしか知らないから
ちょっとだけ気まずい空気の中、私の携帯が同じような電子音を鳴らした
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なむる。(プロフ) - 雪の王子様さん» 私が出した全ての作品に、本当に素敵なコメント下さって！！ありがとうございます^_^彼らの素敵な姿を描けたらな…頑張ります！ (2020年9月16日 7時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - さっくんでてきた！なんかすごい展開の予感…更新頑張ってください。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2020年8月23日 23時
