17. ページ17
.
ダラリと垂らした両手
それが俺の舞台の終焉の合図
その直後
ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ
いつもだったら、皆の羨望の眼差しがふと解かれるだけなのに
シンと静まり返った空間に拍手が湧いた
え、てそちらに俺や皆が視線を向けるのと、その拍手が鳴り止んだのは同時
俺も含めて全員の視線の先には、最近ダンス教室に入ってきた俺と同い年くらいの男の子
目鼻立ちのくっきりとした清潔感のある子
ダンス教室の端っこの方に座っているその子は、皆の視線にビックリした顔をして、恥ずかしそうにペコペコと頭を下げながら手を下ろした
少しの沈黙の後、皆はまた何事もなかったかのように動き出した
その中で、俺の時間だけが止まっていた
もしかしたら、泣いていたのかもしれない
すごく久しぶりだったんだ
たった一人だけかもしれないけれど、俺のパフォーマンスに手を叩いて賞賛してくれる観客が居た
贔屓目でも何でもなく、あの、純粋な瞳で
俺のダンスが、誰かの心を動かしたんだよ？
それって、凄まじいことだよね
俺は、その子のことを暫く見ていた
向こうは向こうで、既に立ち上がって準備体操をしてるけど
そうか、この感覚が俺はきっと恋しいんだ
その瞬間、何故かもっと、もっとって欲が湧いてきた
もっと、踊りたい
もっと、あんな賛辞を受けたい
もっと、認められたい
先生が俺に近づいて来て、肩を叩いた
休憩しなさいって
そんな先生の言葉を無視して、俺は声高らかに宣言した
『先生！俺、大人になったらダンスでデカくなる！！』
ダンスっていう己の身一つで紡ぎ出される表現に、こんなにも感情を動かしてくれる人が居る
それは、俺の存在自体がその人と同じ時間、同じ空間、同じ感覚を共にしたってこと
それって、めちゃくちゃ凄いことじゃん
妙な高揚感を覚えた
名前も知らない、今まで話したこともない子が、俺のダンスを褒めてくれた
それだけで、俺はまるでトップダンサーにでもなったような不思議な感覚に包まれた
俺の未来が、こんなにもあっさりと転がされるなんて
馬鹿だなって言われれば、そうだよって言うけど
俺は、確信的に未来の俺の姿を想像した
そうだ、あの子の名前、聞かなきゃな
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なむる。(プロフ) - 雪の王子様さん» 私が出した全ての作品に、本当に素敵なコメント下さって！！ありがとうございます^_^彼らの素敵な姿を描けたらな…頑張ります！ (2020年9月16日 7時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - さっくんでてきた！なんかすごい展開の予感…更新頑張ってください。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なむる。 | 作成日時：2020年8月23日 23時
