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＊
いつもずっと、1人だったので。
覚えている限り、孤独だったので。
こんな時どうしたらいいか、わたしには少しもわからなかった。
＊
待ち合わせのカフェは、身震いするほどオシャレ。
ガラスを通して店内がすこし見えて、わたしにはすぐ彼がわかった。
窓際の席でひとりスマホをいじっている彼は、それだけで絵になっていたので。
大学の外に出て、たくさんの人が行き交う街の中でも、すてきな人は目を引くものなのだ。
入り口に反射する自分の冴えない姿にまた、心がくじける。
朝家を出るときから、何度も繰り返し、くじけ続けている。
「……どうかなさいましたか？」
気づいたら20分ほども店の前で固まっていたので、心配した店員さんが出てきてしまった。
わたし…かんっぜんに不審者である。
しどろもどろのお手本みたいに、
「えっと…このお店で待ち合わせで。
たぶん、もう、中に…」
「あ、でしたらご案内いたします！」
オシャレ空間に見合う、美人店員さんの笑顔に、思わずつられて力のない笑いを浮かべる。
もう覚悟を決めて、ロボットのようなおぼつかない動きで、彼のもとへ向かう。
近づくと、窓の外、行き交う人の流れをぼんやりと見ていた彼。
「永瀬くん」
座っていてもわかる、スタイルの良さ。
今時なかんじにセットされた髪は、いつもどおりにカッコいい。
振り向いて、こちらを見上げた瞳も。
ただしわたしを認めた瞬間、肘をついたまま、不満げな表情になったのが…こわい。
「……やっと来た」
「ごめん……道が混んでて」
……道が？20分も遅刻したくせに、我ながらかなり苦しい言い訳だ。
「へー」
何か言いたげな表情で、永瀬くんはわたしに目を向けたまま、
「ま、すわりなよ」
向かいの席を示す。
こくり、とうなずくと、椅子を引いて腰掛ける。
完全にさめきった永瀬くんのコーヒーを見つけて、またすこしいたたまれなくなった。
鋭い視線が、俯いた頭頂部のあたりに突き刺さる。そしてまったくそらされないままだ。
わたしは絶対に目を合わすまいと、テーブルの木目に視線を集中させる。
冷や汗が止まらない。
「かわいいじゃん」
正面からそんな声だけが聞こえた。
唐突だったので、なにを言われているのか飲み込むまで時間がかかった。
「Aちゃん。
今日。
いつもと雰囲気違う。俺のため？」
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作者名：菜 子 | 作成日時：2020年6月5日 21時
