Ex-6 ページ45
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俺が目を閉じると、Aは胸の中で身じろぎして、俺の腕から離れる。
ガサゴソ、と、何かを探すような音。
作業する衣摺れの音。
……ん?
俺は目を閉じたまま、眉をひそめた。
彼女は一体、なにを始めたんだ……?
・
「……目、開けて、廉くん」
緊張したAの声に、俺がゆっくり目を開くと、
暗い部屋の中で、ろうそくの柔らかな光が揺らめいていた。
・
机の上に、ろうそくが立てられたホールケーキ。
その真ん中に乗せられた、チョコレートでできたプレートには、
《HAPPY BIRTHDAY Ren》
の文字。
・
俺は自分のバカさ加減も含め全てを理解して、そして、小さなため息をつく。
「……廉くん、お誕生日、おめでとう」
今日、1月23日は俺の誕生日だった。
俺ですら忘れていたことを、ちゃんと覚えていたらしいAは、
すっかり驚かされた俺を得意げに見て、
「サプライズ、大成功だね」
と暗闇の中で笑った。
・
「こっそり持ってくるの、大変だったんだよ」
何度も廉くんにバレないか不安だった、と赤くなるAに、すっかり騙されたことが悔しいやら、嬉しいやらで、脳内は乱れまくっている。
「…ケーキ…Aが作ったの?」
俺がぼんやりと尋ねると、Aは恥ずかしそうにうなずいた。
「下手くそなんだけど……」
お皿とフォークを差し出された俺が、Aから緊張の眼差しを向けられながら、
ケーキを口にする。
「……どう?」
不安そうに尋ねるAに、美味しいよ、と素直に答えると、
「よかったあ…」
Aは花がほころぶように笑った。
「廉くん、お腹空いたって言うから、早く食べてもらわなきゃって焦っちゃった」
照れたような瞳。
また、抱きしめたい衝動が、俺を支配する。
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こんぶ(プロフ) - はじめまして。とーーーーーーーっても面白かったです!店舗もよく長さもちょうどよく、スラスラ読めました。主人公がどんどん廉くんに変えられていって、色づく二人の世界がもっと見たくなりました!付き合ってからの続編とか…希望です^^* (2019年12月30日 3時) (レス) id: d4a749af9f (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - yukiさん» yukiさん、ありがとうございます!お話が好きと言っていただけて嬉しいです。次回作、まだ未定ですが考えているので、upした際は読んで頂けたら嬉しいです! (2019年9月26日 14時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - お疲れ様でした!!お話が好きで更新がとても楽しみでした!次も楽しみです! (2019年9月25日 16時) (レス) id: 5a8ccb1156 (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - Sさん» Sさんありがとうございます!ご期待に添えるか不安ですが笑いちゃいちゃさせられるように頑張ります!応援ありがとうございます! (2019年9月22日 11時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 本編完結おめでとうございます!番外編でれんくんといちゃいちゃしてるとこいっぱい見れたら嬉しいです! (2019年9月22日 7時) (レス) id: a50c63b20c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜 子 | 作成日時:2019年9月18日 13時