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「俺は、はじめから気になってた、あんたのこと。
初めて見かけたあの日、
……なんだか消えそうに見えて、繋ぎ止めたくなって」
……わたしに奇跡が降った日だ。
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優しくて穏やかな声。
廉くんの香りに包まれて、目を閉じる。
「ごめん。
多分はじめから、特訓なんて、俺にとっては関係なかったよ。
……ただ、もっと知りたくて、誘った。
Aといるのが、楽しかったから」
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「Aにとっては、そうじゃなかった?」
わたしにとっても。
「ううん……
楽しかったに決まってる。
当たり前です。
だって、わたしは廉くんといるだけで、泣いたり笑ったり、忙しくて」
今まで知らなかった気持ちばかりで。
「廉くんをわたしだけのものにしたい、って、そう思うようになってしまって……」
自分の気持ちすら抑えられなくて。
「同じだよ。
俺と」
…え。
わたしは驚いて顔を上げた。
・
「実は、俺にもよくわからないんだ。
こんな気持ちになるの、生まれてはじめてで」
廉くんは自嘲気味に笑った。
「自分を変えるために努力するAを応援したいのに、変わらないで欲しいなんて。
嫉妬なんて、ガキかよって」
嫉妬……?
廉くんが?
なんだか信じられないことを真面目な顔で言っている。
「いつも一生懸命なあんたといると、俺まで明るくなる。
それを見てるのが、たぶん好きなんだ、俺」
ねえ、この気持ちは、何だと思う?
いたずらっぽく尋ねる廉くんに、わたしは顔を真っ赤にした。
だってまるで、それは……
信じられずに、わたしは目を丸くした。
廉くんのその気持ちは、まるで………
・
・
・
教室に入ると、里奈ちゃんが一番にわたしをみた。
「おはよ、わらし!」
「里奈ちゃん、昨日は………ありがとう」
すると、わたしたちの席の周りにあっという間に女子が集まる。
「ちょっとわらし!そんなことより、はやく教えなよ」
「そうそう!昨日のこと」
「あのあと廉くんと2人で何話したの!?」
おもわずその勢いに圧倒される。
「……えっと」
わたしは顔を赤らめた。
「わたしと廉くんは……」
・
真っ赤になってつたえると、みんなは悲鳴のような歓声をあげた。
「えーー!よかったじゃん」「おめでとー!」「すごい、わらしやるーー!」
わいわい盛り上がる中心に自分がいるなんて。
暖かさに包まれて、うるっとしてしまう。
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こんぶ(プロフ) - はじめまして。とーーーーーーーっても面白かったです!店舗もよく長さもちょうどよく、スラスラ読めました。主人公がどんどん廉くんに変えられていって、色づく二人の世界がもっと見たくなりました!付き合ってからの続編とか…希望です^^* (2019年12月30日 3時) (レス) id: d4a749af9f (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - yukiさん» yukiさん、ありがとうございます!お話が好きと言っていただけて嬉しいです。次回作、まだ未定ですが考えているので、upした際は読んで頂けたら嬉しいです! (2019年9月26日 14時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - お疲れ様でした!!お話が好きで更新がとても楽しみでした!次も楽しみです! (2019年9月25日 16時) (レス) id: 5a8ccb1156 (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - Sさん» Sさんありがとうございます!ご期待に添えるか不安ですが笑いちゃいちゃさせられるように頑張ります!応援ありがとうございます! (2019年9月22日 11時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 本編完結おめでとうございます!番外編でれんくんといちゃいちゃしてるとこいっぱい見れたら嬉しいです! (2019年9月22日 7時) (レス) id: a50c63b20c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜 子 | 作成日時:2019年9月18日 13時