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「待って」
・
風をビュンビュン切って、走っている。
まわりの下校中の生徒たちが、わたしの勢いに驚いて立ち止まるほど。
「お願い、……待って!」
校門を出て歩きはじめていた廉くんは、
全力で走って、肩で息をしているわたしをふりむいて、すごく驚いていた。
・
「ちょっと………どうしたの」
あまりにも荒い息に、自分の体力の無さを痛感する。
でも、今は必死だった。
・
「……っあの、……ちがうんです。
誤解なんです」
わたしが話し始めると、
「もういいんだよ」
廉くんは優しく首を振った。
「俺、いつも強引だったから。
Aが断れないだけだって、わかってたよ。
……最近ずっと、Aが苦しそうだったことも」
・
だからもう俺に気を遣わなくていい、と付け加える廉くんに、
わたしは、
「そうじゃない!」
とさけぶ。
その剣幕に、
廉くんは言葉を飲んだ。
・
「廉くん。ごめんなさい。
わたし、廉くんのこと、ほんとは迷惑なんかじゃありません」
「……え」
「さっき、うそついてしまいました。
ごめんなさい」
ほんとのきもち。
「わたしはわがままだよ。だって」
たとえ廉くんに嫌われても、
迷惑かけたとしても、
わたしは廉くんのそばにいたいんです。
隣で笑顔を見ていたいです。
だって……
・
「わたしほんとは
廉くんの事が好き………、」
・
「……え」
廉くんは目を見開いた。
そこでわたしは、一度息継ぎをして、言葉を続けた。
・
「………好き、なんですか?
この気持ちが、好き、ってことなんでしょうか?」
・
「……。え?」
廉くんは眉をひそめた。
・
わたしは必死でつづけた。
「わたしには……わからない。
教えてください、廉くん。
だって、廉くんはわたしにとって、生まれてはじめて………」
はじめて、心から大切だって思った人だから。
「あまりに感情が……、大きすぎて」
この気持ちがなんなのかも、もうわからないほど。
・
廉くんはしばらく黙った。
わたしの目の奥を探る瞳。
でもその温度は、いつもよりも熱い気がする。
廉くんらしくない、少し獰猛な色。
「わ」
驚くわたしの手をとって、体ごと、彼の胸に抱き込まれる。
心なしか、廉くんの手のひらは熱い。
「聞こえる?」
廉くんの胸に、耳を傾けて、驚く。
心臓の音、すごい。
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こんぶ(プロフ) - はじめまして。とーーーーーーーっても面白かったです!店舗もよく長さもちょうどよく、スラスラ読めました。主人公がどんどん廉くんに変えられていって、色づく二人の世界がもっと見たくなりました!付き合ってからの続編とか…希望です^^* (2019年12月30日 3時) (レス) id: d4a749af9f (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - yukiさん» yukiさん、ありがとうございます!お話が好きと言っていただけて嬉しいです。次回作、まだ未定ですが考えているので、upした際は読んで頂けたら嬉しいです! (2019年9月26日 14時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - お疲れ様でした!!お話が好きで更新がとても楽しみでした!次も楽しみです! (2019年9月25日 16時) (レス) id: 5a8ccb1156 (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - Sさん» Sさんありがとうございます!ご期待に添えるか不安ですが笑いちゃいちゃさせられるように頑張ります!応援ありがとうございます! (2019年9月22日 11時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 本編完結おめでとうございます!番外編でれんくんといちゃいちゃしてるとこいっぱい見れたら嬉しいです! (2019年9月22日 7時) (レス) id: a50c63b20c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜 子 | 作成日時:2019年9月18日 13時