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「A」
登校途中の道で、偶然声をかけられる。
誰だかすぐにわかって、わたしは慌てて振り向く。
「おはよ」
ーーわたしをわらしとよばないのは、廉くんだけだ。
「おはよう……」
挨拶を返すと、廉くんはあくびをした。
少し眠そうだけど、朝も相変わらず綺麗な彼。
なんか最近寒くない?と手のひらを擦り合わせるようすを、緊張しながら横目で盗み見た。
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放課後に街に繰り出すことには、特訓のおかげで少しは慣れてきた。
だけど、誰かと一緒に登校するのに慣れていないからか、今はすごくぎこちない。
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「あの……」
わたしが珍しく話し始めると、廉くんは顔を向けてくれる。
「昨日は、ありがとうございました……」
心臓の側のドラえもんを握った。
精一杯の勇気を振り絞ったつもりで。
廉くんは笑った。
「パフェ、すげえうまかったよね」
それにはわたしは目を輝かせて、大きく頷いた。
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昨日、トレーニングの一貫として、2人で人気カフェに行ったのだ。
はじめは男の子と2人でお店に入ることにも緊張してたのに、今は少し成長したかもしれない。
パフェはほっぺたが落ちそうなほど美味しかった。
そのときも廉くんは、慌てたり喜んだりするわたしの様子を見て笑っていた。
……ほんと、いじわる。
でも廉くんは、最後にはパフェをわたしの分も奢ってくれた。
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「ま、ご褒美にパフェも食べたし。
今日からまた、ビシバシ鍛えるからね」
「……う……」
廉くんが本当にスパルタなのはもうわかっているので、うなだれる。
でも、……わたし、変わってきているかな。
廉くんの強引さすらありがたいなんて思う日が来るとは思わなかった。
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なんだか穏やかな空気の中、2人並んで歩いてあると、ふいに、自分たちが周りの生徒の視線を集めていることに気づく。
中には、わらしと廉くんだ、なんて、あからさまに噂している人もいる。
廉くんを見ると、全く気にせずに歩いていた。
それでもわたしは、こういうことがあるたびに、胃が痛い。
……また、誤解されたらどうしよう。
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実は最近、新たな悩みができた。
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まだ特訓を始めたばかりの頃、2人で立ち寄ったカフェ。
緊張しながら話があると持ちかけると「なに?」いつものように優しい表情を向けた廉くん。
《特訓のこと、皆には内緒にしてほしい》
そう伝えると、廉くんは少し驚いて
《なんでよ》
口を尖らせた。
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こんぶ(プロフ) - はじめまして。とーーーーーーーっても面白かったです!店舗もよく長さもちょうどよく、スラスラ読めました。主人公がどんどん廉くんに変えられていって、色づく二人の世界がもっと見たくなりました!付き合ってからの続編とか…希望です^^* (2019年12月30日 3時) (レス) id: d4a749af9f (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - yukiさん» yukiさん、ありがとうございます!お話が好きと言っていただけて嬉しいです。次回作、まだ未定ですが考えているので、upした際は読んで頂けたら嬉しいです! (2019年9月26日 14時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - お疲れ様でした!!お話が好きで更新がとても楽しみでした!次も楽しみです! (2019年9月25日 16時) (レス) id: 5a8ccb1156 (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - Sさん» Sさんありがとうございます!ご期待に添えるか不安ですが笑いちゃいちゃさせられるように頑張ります!応援ありがとうございます! (2019年9月22日 11時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 本編完結おめでとうございます!番外編でれんくんといちゃいちゃしてるとこいっぱい見れたら嬉しいです! (2019年9月22日 7時) (レス) id: a50c63b20c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜 子 | 作成日時:2019年9月18日 13時