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「廉くんは優しいから。
だからこんなわたしにも、仕方なく話しかけてくれるだけで…」
毅然とした声を出したつもりだったのに、随分弱々しくなってしまう。
自分で言ったことに傷ついている自分がいた。
……なんて、ばかみたいな。
それでも彼らの耳には届いたようだ。
「え、まじ?
違うんだ」
「てっきり信じたよなー」
全身の力が抜ける。ちゃんと、伝わった。
「まあ、永瀬はよくわからないから」
「あいつ、あんなにモテるのに、女子と話すのとか珍しいしね」
また噂で盛り上がる男子。
わたしはほっとして、溜息をつく。
……よかった。
言いたいこと、言えた。
・
誤解、解けたよ、廉くん。
わたし、すこしずつ強くなれてる?
・
「それじゃ……」
ぺこりと頭を下げて男子の間を通り抜けようとすると、
「お、ストップ」
「わっ」
突然腕を掴まれて、立ち止まる。
ちょっとだけ鳥肌がたった。
「わらしちゃん。今日の放課後ひま?
俺らと遊ぼうよ、いろいろ教えてあげるし」
「おまえ、その言い方、やばいって」
「やばいのはおまえの頭だよ」
わけわからない会話が頭の上を飛び交う。
腕を掴んでる男子が、にやりとして隣に立っている男子のことを指差した。
「こいつが毎日、わらしちゃんが可愛くなったってうるさいんだよね。
遊んでやってくれない?」
…へ…?
指摘された男子はすこし顔を赤くして、「バカ」と言った。
……なんか。
うるさくて、もりあがって、こっちの意見なんて御構い無し。
悪い人たちじゃないんだろうけど……すごく、わたしの苦手なタイプ……。
ど……どうしよう。
「あ……あの、すみません、今日は用事が……」
断ろうと腕を引っ張るけど、力が強くて全然のがられられない。
「え、なんでよー。いいじゃん、俺らの奢りだよ?」
「そんなに怯えなくても、俺らこう見えて優しいし……」
そう言った男子が、手のひらをわたしの頭に乗せようとしてくる。
「………や」
どうしよう、
助けて……!
・
「なにしてんの」
・
その一声に、わたしの腕を掴んでいた力が緩んだ。
「……あ」
「いや…」
取り囲んでいた男子が、まわりから離れていく。
「そいつ嫌がってない?」
いつも、いつも、助けてくれる。
綺麗な顔には似合わない、きつい声をかけているのは、
「……廉くん」
・
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こんぶ(プロフ) - はじめまして。とーーーーーーーっても面白かったです!店舗もよく長さもちょうどよく、スラスラ読めました。主人公がどんどん廉くんに変えられていって、色づく二人の世界がもっと見たくなりました!付き合ってからの続編とか…希望です^^* (2019年12月30日 3時) (レス) id: d4a749af9f (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - yukiさん» yukiさん、ありがとうございます!お話が好きと言っていただけて嬉しいです。次回作、まだ未定ですが考えているので、upした際は読んで頂けたら嬉しいです! (2019年9月26日 14時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - お疲れ様でした!!お話が好きで更新がとても楽しみでした!次も楽しみです! (2019年9月25日 16時) (レス) id: 5a8ccb1156 (このIDを非表示/違反報告)
菜 子(プロフ) - Sさん» Sさんありがとうございます!ご期待に添えるか不安ですが笑いちゃいちゃさせられるように頑張ります!応援ありがとうございます! (2019年9月22日 11時) (レス) id: de17d94e28 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 本編完結おめでとうございます!番外編でれんくんといちゃいちゃしてるとこいっぱい見れたら嬉しいです! (2019年9月22日 7時) (レス) id: a50c63b20c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜 子 | 作成日時:2019年9月18日 13時