10 ページ24
「初めての給料でNINOと行ったときさ、俺本当は緊張して味も何もわかんなかったんだ」
笑いながら言う。
そう、あの日・・・
確かに幸せで、タルトは甘くて、出てきたコーヒーもすごくオシャレで。
でも、すごくドキドキしてたせいでその味の記憶はない。
「だからさ、今度は３人で一緒に行こ？」
この目の前のタルトが果たしてあのときの味なのか・・・
もしかしたらそのときにわかるかもしれない。
「うん」
ニノがうれしそうに笑った。
つられてNINOも笑った。
その笑顔を見て俺も笑う。
「それと・・・」
この際だ。
どうせなら、心にわだかまっていたもう一つも打ち明けてしまおう。
「あのからし色のボーダーのカットソー、NINOにあげてもいいかな？」
無意識のうちに握りしめていた手のひらが汗ばんでいた。
「いいよ」
ニノが笑う。
「っていうかアレ、もともとNINOのでしょ？」
「そうだけど・・・」
NINOがシャットダウンされる時に来ていたというカットソー。
一緒に買い物に行った記憶が蘇るのが辛くて、ずっとしまったままだった。
「じゃあさ、今度はオレとも買い物に行こう？オレにも何か買ってよ」
「・・・うん」
こみ上げるものを抑えて頷いた。
春は新生活スタートの季節。
俺たちにもやっと春が来たのかもしれない。
「桜キレイデスネ」
NINOが舞い落ちた花びらを鼻の頭にくっつけて言う。
その顔がおかしくて、俺は写真に収めた。
きっと、この写真は宝物になる。
そして、新しい記憶として３人の中に刻まれる。
『あなたにとって幸せって何ですか？』
今、俺がそう尋ねられたら自信を持ってこの写真を見せるだろう。
曇り空の下、薄ピンクの明かりはいつまでも俺たちを照らしていた。
-The End
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 401人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
LILY(プロフ) - えーすさん» ありがとうございます！続き需要、意外とあってよかった・・・（笑）たまには振り返りつつ、前へ前へと進んでいければいいなと思っています。こちらこそ、これからもよろしくお願いします^ ^/ (2015年6月10日 3時) (
レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
えーす(プロフ) - もう、なんてすてきなお話たち…大好きなお話の続きが読める幸せ!!ご不幸があっても前向きに進まれてるLILLYさん!!これからもよろしくお願いします♪楽しみで仕方ありません♪ (2015年6月9日 22時) (レス) id: 5a41992d75 (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - 花兎＊さん» ありがとうございます♪さらにお気遣いまで。花兎＊さんの日常を少しでも幸せにできたのなら本当に作者冥利に尽きます！海を越えてお届けし、やり取りできる幸せを感じつつ、また次の１年楽しんでいただけるように頑張ります。また是非遊びに来て下さいねー^ ^/ (2015年6月9日 13時) (レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - 小春さん» わぁ、ありがとうございます> <;大好き！って言っていただけるなんて、本当に私こそなんて言っていいか・・・読んでいただけるだけで光栄なのに。小春さんのコメントにはいつも幸せにしていただいて、励みとさせていただいてます。乗せられて…次も頑張ります！（笑） (2015年6月9日 13時) (レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - みほさん» ありがとうございます！自己満足の企画だからこそ、やるなら最後まできっちりと！とね（笑）それを楽しんでいただけたのなら恐縮ながら大変にうれしいです^ ^/どの話も大切なので、この機会にまた思い出していただけて幸せです。次のお話にもまたぜひ遊びに来て下さい！ (2015年6月9日 13時) (レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LILY
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/Colorfulstory/
作成日時：2015年6月2日 0時
