ふたつの鍵 5−SJ

できることーkh ページ43

消えそうな声で電話にでたユリ。


なにも言えなかった。




泣いているか、笑っているか。

顔も見えないのに今この場で見繕った言葉なんて
かけられるはずがなくて。



どうでもいい話をして、出番が来ちゃって
メールする、とだけ言って電話を切った。




今日はヒョクチェヒョンと、ﾄﾞﾝﾍヒョン
ソンミニヒョンとトゥギヒョンと僕で
雑誌で組まれた特集の取材と撮影をする。


まずは全員で写真を撮って、個人の撮影。

最初にトゥギヒョンが個人の撮影に入った。



ソンミニヒョンがお菓子を取りに行くと言うから
なんとなくついて行くとヒョクチェヒョンもいた。


僕はお菓子は食べる気はなくて
すこし離れた所から2人を見てると
後ろからある会話が耳に入った。



？「ヒョンスくん好きなのに〜ショック！」

？「前からソヒちゃんと噂あったじゃない」

？「ソヒちゃんは愛嬌があるしいいの！
だってミリョン役がハマり役過ぎてさ〜
実際もあんな感じなんじゃないの？あの女優。」

？「たしかに演技とは思えないくらいハマってたけど！
午後からその人の撮影じゃなかった？」

？「あー、そうだ！
私聞いちゃおうかな、スキャンダルのこと！」




静かに振り向くと女性スタッフが2人
笑いながらそんな話をして奥に消えて行った。




絶対にユリのことだ。

スタッフが芸能人やアイドルたちの話を
こんな仕事場ですることにもすごく驚いたけど
それよりユリが心配でたまらなかった。




たしかにドラマでユリが演じたミリョンは
すこし過激で、すごく演技がリアルだったと思う。


でも、それは演技がうまかったってことじゃないのか？

なんでそんな評価の仕方になるんだ。
なにもユリのことを知らないくせに。
　



こんな話、あのスタッフたちは
ユリ本人に話すつもりなんだろうか。

でも、ここで僕が今あのスタッフを追いかけて
やめてあげて、なんて言ったら
余計ユリの足を引っ張ってしまう気もする。

　


つくづく自分のできることの少なさに
嫌気がさして、ため息がこぼれる。


ふと前を見るとヒョクチェヒョンと目があった。

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