４９話 ページ9
「....い、鳴！」
懐かしい声が聞こえる。
その声に引っ張られるかのように、意識が浮上していった。
『ん.......？』
目を開けてぼんやりと景色を眺める。
どこかで見たことのある風景が視線の先に広がる。
すると横から声がかかった。
「お前、いつまで寝てんだよ。もうみんな帰ったぞ。」
『え....？』
声の主は幼なじみの春川蓮だった。
そしてこの教室は........
「いつにもましてボーっとしてんな。大丈夫かよ。」
蓮は心配そうに顔を覗き込んできた。
これは都合のいい夢なのかな.......？
「まじで疲れてんな。お前、最近無理しすぎなんだよ。」
『え......？』
「そりゃあ、
『な、んで、知って......』
「ここが夢、だからだな。」
彼は前の席に座り、こっちを向く。
彼の声は悲しく聞こえる。
「なぁ、お前って何がしたかったんだ？」
『それは........』
一体何がしたいのか、その明確な答えがすぐに出ない。
ただ弔と一緒に居たいのか。
弔と一緒にあの社会を壊したいのか。
「わかんないならさ、
『へ？』
「全部なくなる前のお前のやりたかったこと、考えようって言ってるの！！」
『私のやりたかったこと......』
一体何がやりたかったのか。
あの生活で何を望んでいたのか。
『私が早々に居なくなりたかったな......』
「なんで？」
『私が居なければあの家族は平和だった。もっと�犲�由”に生きれたんだと思うんだよね......』
「お前のそういうところほんと、変わんないな」
彼はそう言って悲しそうに笑った。
その笑顔は嫌いだった。
なぜだかはわからないけど。
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作者名：雪丸 | 作成日時：2021年11月2日 20時
