メイおばさんの家�� ページ43
親権者の死亡や病気などが理由で、大人と暮らせなくなった子供たち。彼らを保護するのが児童養護施設『メイおばさんの家』。
「あなたの身辺調査をするのが、私の今回の出張目的でした。」
「仙台ってのは嘘か…」
ダイニングの椅子に座る俺の膝では娘がかわいく眠っている。隣には七海、目の前には施設長だという初老の女性、メイが座っていた。
「自分の娘がどこにいるのか忘れるなんて…」
俺は自分に失望した。健忘症というのは、自分が何を忘れているのかさえ忘れるのだ。そして、妻の事さえも。
「奥さんのお墓、どこにあるか分かりますか？」
「…義母と同じ墓地だ、と思う。」
妻は3年前事故で死んだ。俺はそれが受け入れられず、元々健忘症だというのも相まって、今日、七海に現実を突きつけられるまで自分の記憶を改竄していた。
「どこかで妻が生きてると信じたかったのかもしれない。娘は施設になんか入ってなくて、俺はいないけど、妻と娘は2人で幸せに暮らしている。」
俺の理想を2人は黙って聞いた。
俺は出されたミネラルウォーターを一気に胃の中へ片付けて、「これからどうすればいい？」と誰にでもなく聞いた。
「まず、仕事の件ですが…」
七海は気不味そうに話題に触れる。クビの件は知れ渡っているらしい。
「日本でいう『明日から来なくていい』は『精度を上げて出直してこい』という意味なので、あなたはまだクビにはなっていません。」
「………は？」
困惑と怒りと困惑と、ここまでの旅費と時間を返せという気持ち。五条悟、初めから掴みどころのない男だとは思っていたし、夜蛾学長は『言葉足らずなところがある』と言っていた。
「そんなかわいいもんじゃねぇだろ…」
「日本で仕事を続けるとすれば、ホープさんをどうするかという話になります。」
七海の視線は施設長メイに移る
「私たちが子供を保護する条件に、『親の経済状況』、『親の病気』というのもあるの。だから安心して。ホープちゃんをしっかり育てられるようになって、また迎えにきてね。」
涙腺が緩むのを感じた。目頭を拭ってメイの手を強く握る。
「ありがとう、メイ。ホープの事を頼むよ。」
かくして俺は再び日本でやり直す事にした。
その夜は娘を抱いて眠って、次の日の朝、成田へ立った。日も登らない時間にも関わらず、娘はその小さな手を一生懸命に振って俺達を見送ってくれた。強い子だった。
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小倉トースト山田(プロフ) - 92Uraniumさん» ご指摘ありがとうございます！一応、ジャポニスム感(欧米人にとって日中韓の違いわからないのと同じ)を出す為の表記だったのですが、分かりにくいし千葉の方は普通に不快ですよね…次回の更新時に修正させていただきます！応援ありがとうございます〜！ (2022年2月8日 17時) (
レス) id: e9009eb640 (このIDを非表示/違反報告)
92Uranium(プロフ) - すごく細かい事になってしまうんですが、プロローグの「東京の、成田という空港」というところ、成田空港って千葉にあるんですが、意図があって「東京」にしたわけでないのであれば修正されたほうがよろしいかと思います。作品自体はとても好みなので頑張ってください。 (2022年2月8日 17時) (レス) @page3 id: 30affeabb2 (このIDを非表示/違反報告)
小倉トースト山田(プロフ) - scytheさん» わーん、この系統の話好きな方このサイトであまりお見かけしないので嬉しいです〜！ありがとうございます！ (2022年1月22日 9時) (レス) @page33 id: 4bbcb25095 (このIDを非表示/違反報告)
scythe(プロフ) - めちゃくちゃ好みの作品でびっくりしました……、…、…大好きです…！！続き楽しみにしてます！！！！！ (2022年1月22日 1時) (レス) id: 5a2afd6561 (このIDを非表示/違反報告)
小倉トースト山田(プロフ) - サツキさん» 嬉しすぎるコメントです…ありがとうございます胸に刻みます… (2022年1月19日 23時) (レス) id: 4bbcb25095 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小倉トースト山田 | 作成日時：2022年1月5日 18時
