メイおばさんの家�� ページ42
七海の家を片付けて、スマホで格安航空チケットを予約して一眠りした後、成田空港へ向かった。難なくチェックインを済ませ、空港内のレストランで安い朝飯を食って飛行機に乗った。
数十分から1時間程毎に目を覚ましながらも、俺は所要12時間のほとんどを寝て過ごした。機内サービスの映画を見てもよかったが、残念ながらもう見飽きていた。
「おかえりなさい、Mr.テイラー。」
小太りの税関職員からパスポートを受け取ってポケットにしまう。軽いスーツケースを転がして空港を出れば、見慣れた光景が広がっていた。我が故郷だ。
「ルイジアナの方へ行けるか？」
タクシードライバーと話していると、後ろから肩をトントンと叩かれた。俺は話を邪魔されて機嫌が悪くなり、舌打ちをして振り返った。
「えっ、えぇ？ 何してんだよ。」
「出張、です。」
そこに立っていたのは、いつもの白いスーツではない、普通のビジネスマン風の格好をした男、七海建人。
「追いかけてきたのか？ 暇人かよ」
「誤解しないでください。私はあなたより先に着いていました。」
「はあ？」
訳がわからない。七海は昨日から仙台の方に出張へ行くと言っていた。その彼がなぜ、今ここ、アメリカはテキサスの、ダラス国際空港にいるのか。
「運転手さん、行き先変更です。」
七海は俺を押し退けてタクシーに乗り込み、勝手に行き先を伝えると、「はやく乗ってください」と急かしてきた。
発進した車は東へ東へ、行き先変更と言いながらも俺の自宅付近へ向かっていた。車内は無言で気不味い空気が漂っていて、ドライバーは明らかに俺たちの仲を勘違いしているようで話しかけても白い目を向けてくる。
走り続ける事3時間、バカみたいなチップを要求通りに渡して俺たちは車を降りた。
「何だここ」
「見覚えあるでしょう」
言われてみればある気がする。小さな運動場と遊具、平家の建物。看板には『メイおばさんの家』とある。
「ダメだ。俺は入れない。」
入りたくない。何故だか分からない。ここに足を踏み入れたら、拒絶している現実が一気に襲いかかってくる気がする。
「パパ！」
愛しい声が聞こえた
「ホープ…」
駆け寄ってきた娘を抱き抱えて、強く、強く抱きしめる。いい匂いがした。太陽のような匂いだった。娘は俺の暗い道を照らしてくれる、太陽そのものなのだ。
娘のかわいい洋服を汚してしまう事を申し訳なく思いながら、俺はただただ泣き崩れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 233人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小倉トースト山田(プロフ) - 92Uraniumさん» ご指摘ありがとうございます！一応、ジャポニスム感(欧米人にとって日中韓の違いわからないのと同じ)を出す為の表記だったのですが、分かりにくいし千葉の方は普通に不快ですよね…次回の更新時に修正させていただきます！応援ありがとうございます〜！ (2022年2月8日 17時) (
レス) id: e9009eb640 (このIDを非表示/違反報告)
92Uranium(プロフ) - すごく細かい事になってしまうんですが、プロローグの「東京の、成田という空港」というところ、成田空港って千葉にあるんですが、意図があって「東京」にしたわけでないのであれば修正されたほうがよろしいかと思います。作品自体はとても好みなので頑張ってください。 (2022年2月8日 17時) (レス) @page3 id: 30affeabb2 (このIDを非表示/違反報告)
小倉トースト山田(プロフ) - scytheさん» わーん、この系統の話好きな方このサイトであまりお見かけしないので嬉しいです〜！ありがとうございます！ (2022年1月22日 9時) (レス) @page33 id: 4bbcb25095 (このIDを非表示/違反報告)
scythe(プロフ) - めちゃくちゃ好みの作品でびっくりしました……、…、…大好きです…！！続き楽しみにしてます！！！！！ (2022年1月22日 1時) (レス) id: 5a2afd6561 (このIDを非表示/違反報告)
小倉トースト山田(プロフ) - サツキさん» 嬉しすぎるコメントです…ありがとうございます胸に刻みます… (2022年1月19日 23時) (レス) id: 4bbcb25095 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小倉トースト山田 | 作成日時：2022年1月5日 18時
