診察�� ページ35
入院2日目
「何の映画を見ましたか？」
今日もベッド元の椅子に腰掛けた七海は尋ねてきた
「2012年の『What Maisie Knew』」
「人形はどうです？ 殴られましたか？」
「いや、今まで一度も殴られてない。」
「流石です」
マルチタスクは苦手だが、気を抜かないという事に関しては前職で鍛えられていた。
「この映画を入れたのはどういう意図だ？」
「別に、特に意図はありませんよ。」
足を組んだ七海は膝に乗せたメモに映画の名前を書き足していく
「俺の腕が折れてる事に感謝するんだな」
七海は少し慄いたようだった。目を伏せてメモを続ける。
"両親が離婚した少女"を通して見る【家族】の形。妻と離婚し、何年も娘と会っていない俺にはかなり響いた。
「娘さんに会いたいですか？」
「いつも想ってる」
七海は頷いた
「奥さんには？」
「……謝りたい」
七海の手が止まる
「寄りを戻したいという事ですか？」
ペンを止めた七海は顔を伏せたまま尋ねる
「無理だと思ってるんだろ。俺だってそう思う。」
彼女には幸せになってほしい。俺といない方が幸せになれる。それは分かっている。それでも、一緒にいたい。
「七海さん？」
気がつくと、七海は怒りにも似た表情でこちらを静かに睨んでいる(真相は定かではないが俺からはそう見えた)ので、俺はまた悪い意味で何かしてしまったのだろうかと焦る。
「…明日は戦争映画をチョイスして下さい」
戦争から逃げていると見られたのだろうか？ 七海はそう命令すると何かを走り書きしてボードを置いた。
「おすすめは？」
「『ロシアン・スナイパー』とかですかね」
「ロシアは好きじゃない」
俺の言葉を鼻で笑うと七海は立ち上がった
「PXへ行ってきます。何か欲しいものは？」
「なんでPXなんて言うんだ？ 売店という日本語があるだろ」
「分かりやすいかと」
七海は変なところで気を使う。普段は話しやすい相手なのに、たまに何を考えているのか全くわからない時がある。
「じゃあ、蚊取り線香買ってきてくれよ。」
「病室に蚊はいないでしょう」
「あの匂いが好きなんだ」
そう言うと七海は納得したような、してないような微妙な顔で廊下に出ていった。
母親の熱狂的趣味でカラテに触れ、高校の授業で日本語、イラクで日本文化に触れた。日本隊の彼らが焚いていたあの匂いが忘れられない。彼らと過ごしたのは数週間であったが、何となく頭に残る匂いとなっている。
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小倉トースト山田(プロフ) - 92Uraniumさん» ご指摘ありがとうございます！一応、ジャポニスム感(欧米人にとって日中韓の違いわからないのと同じ)を出す為の表記だったのですが、分かりにくいし千葉の方は普通に不快ですよね…次回の更新時に修正させていただきます！応援ありがとうございます〜！ (2022年2月8日 17時) (
レス) id: e9009eb640 (このIDを非表示/違反報告)
92Uranium(プロフ) - すごく細かい事になってしまうんですが、プロローグの「東京の、成田という空港」というところ、成田空港って千葉にあるんですが、意図があって「東京」にしたわけでないのであれば修正されたほうがよろしいかと思います。作品自体はとても好みなので頑張ってください。 (2022年2月8日 17時) (レス) @page3 id: 30affeabb2 (このIDを非表示/違反報告)
小倉トースト山田(プロフ) - scytheさん» わーん、この系統の話好きな方このサイトであまりお見かけしないので嬉しいです〜！ありがとうございます！ (2022年1月22日 9時) (レス) @page33 id: 4bbcb25095 (このIDを非表示/違反報告)
scythe(プロフ) - めちゃくちゃ好みの作品でびっくりしました……、…、…大好きです…！！続き楽しみにしてます！！！！！ (2022年1月22日 1時) (レス) id: 5a2afd6561 (このIDを非表示/違反報告)
小倉トースト山田(プロフ) - サツキさん» 嬉しすぎるコメントです…ありがとうございます胸に刻みます… (2022年1月19日 23時) (レス) id: 4bbcb25095 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小倉トースト山田 | 作成日時：2022年1月5日 18時
