診察�� ページ34
「日記は書いてますか？」
20時過ぎ。仕事終わりの七海はまた俺の病室に寄ってくれた。
「今９冊目だよ」
「どんな事を書いてます？」
「ただその日にあった事を覚えてる限り…読み返したら分かるように。毎日は書いてない。」
「例えば今日はどんな風に書きますか？」
だんだん気付いたが、これは面会ではなく診療だった。七海は俺を見にきたのではなく、俺の心を診にきたのだ。
「お前を苦しめたこと、生徒達が会いに来てくれたこと、ケーキで胃もたれ寸前である事…とか。」
本当は書くつもりだが、五条の脅迫じみた伝言については言わなかった。
「どこのケーキを食べたんです？」
「あー…ギュスターヴ・ルボン…じゃない、何だった？ タルトケーキだった。」
店の名前は悠仁が言っていた。タルトケーキが自慢の店らしくタルトという文字が入っていて、フランス語だったような気がする。しかし、その他は思い出せない。
「映画は何を見ました？」
「ラッセル・クロウの『グラディエーター』だ」
今度はすぐに答えられた。好きな俳優で、前から気になっていた映画だったからだ。
「主人公の名前は？」
「あー…ok、今思い出す。マイク？ 違うな、マキシーヌは女だし…マチルダ…も女だ。全部俺の昔の女だ。」
「マキシマス」
「そう、マキシマス。」
七海はため息をついた。思ったより酷いか？
「思ったより酷いですね」
そう言われても特段落ち込むことはない。俺はずっとこれと付き合ってきたのだから。元嫁の次に長い付き合いだ。
「タルトケーキだというのは覚えていましたね。では、何かに関連つけて思い出してください。任天堂と言えば？」
「…マリオ・ブラザーズ。そうだ、『タルト・オ・マーリオ』だ。」
七海は誰から聞いたのか、ケーキ屋の名前を知っていた。
「マキシマスはマキシーヌの男性名だと覚えるのはどうですか？」
「そうだな、初カノだから忘れない。」
カルテ代わりのメモ書きをバインダーに挟んで、七海は足を組んだ。
「職務経歴書はどうですか？」
「………はあ」
俺のため息を聞いて七海はこちらに顔を寄せる
「裏紙にメモしてたじゃないですか」
「…笑うなよ、そのメモをどこかにやった。」
「店の名前は？」
「…マリオ……タルト・オ・マーリオ！」
「そうです」
七海はバインダーを抱えて笑った。何となくだが、『非力でかわいい七海』を想像することができた。
「何かを覚える時はこの方法を使ってください」
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小倉トースト山田(プロフ) - 92Uraniumさん» ご指摘ありがとうございます！一応、ジャポニスム感(欧米人にとって日中韓の違いわからないのと同じ)を出す為の表記だったのですが、分かりにくいし千葉の方は普通に不快ですよね…次回の更新時に修正させていただきます！応援ありがとうございます〜！ (2022年2月8日 17時) (
レス) id: e9009eb640 (このIDを非表示/違反報告)
92Uranium(プロフ) - すごく細かい事になってしまうんですが、プロローグの「東京の、成田という空港」というところ、成田空港って千葉にあるんですが、意図があって「東京」にしたわけでないのであれば修正されたほうがよろしいかと思います。作品自体はとても好みなので頑張ってください。 (2022年2月8日 17時) (レス) @page3 id: 30affeabb2 (このIDを非表示/違反報告)
小倉トースト山田(プロフ) - scytheさん» わーん、この系統の話好きな方このサイトであまりお見かけしないので嬉しいです〜！ありがとうございます！ (2022年1月22日 9時) (レス) @page33 id: 4bbcb25095 (このIDを非表示/違反報告)
scythe(プロフ) - めちゃくちゃ好みの作品でびっくりしました……、…、…大好きです…！！続き楽しみにしてます！！！！！ (2022年1月22日 1時) (レス) id: 5a2afd6561 (このIDを非表示/違反報告)
小倉トースト山田(プロフ) - サツキさん» 嬉しすぎるコメントです…ありがとうございます胸に刻みます… (2022年1月19日 23時) (レス) id: 4bbcb25095 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小倉トースト山田 | 作成日時：2022年1月5日 18時
