【呪術廻戦】七海建人の憂鬱【男主】

家を出る時 ページ39

3月31日 夜


「パジャマパーティしよう」

「パジャマパーティ？」

学生寮に運ぶ荷物をひと通りまとめ、明日のために寝ようという時にAが言った。


「いいですよ。夜食を作ります。」

「手伝う」

Aは何処となく元気がない。
1年足らずの期間とはいえ、住み慣れた家を出るのは心苦しいものなのだろう。

七海は軽めのオープンサンドイッチを作ろうと冷蔵庫を開ける、Aは暗室からパンを持って来る。
数分足らずで夜食は完成、2人は七海のクイーンサイズベッドがある寝室へ引きこもった。


「ネットフリックスで気になっていたのがあります」

七海チョイスの海外映画をつけて2人は夜を楽しむ。


「少し前に、死んだらどうなるのか聞きましたよね」

物語が中弛みに入ったところで七海が口を開いた。


「うん。解明された？」

「科学的には無理です」

4Kテレビでは、笑顔の似合う親子が砂浜で遊んでいる。親は海の側に、子はパラソルの側に。楽しみながらも子供を海の危険から遠ざけている。

これからはもう、同じ任務に就くことは珍しくなるだろう。七海はAを死地へ送り出さなければならない。


「死後は、遺体が残れば焼かれ、砕かれた骨は壺に入れられ土に還ります。これがこの国の埋葬法です。地上には何も遺りません。」

七海は綺麗なテレビ画面を見つめたまま淡々と語る。


「でも、覚えておいて下さい。貴方の大切な人はいつも此処にいます。」

七海の指はAの胸をトントンと叩く。


「貴方が必要に思う時や、会いたい時、いつでもここにいます」

「……right here?」

映画の真似をしてAが聞き返せば、七海は微笑む。


「right here. 」

Aは自分の手で胸をトントンと軽く叩き、微笑む。またトントン。またもう一度。


「ここに、たくさんの人がいるような生き方をして下さいね」

「任せてよ」

夜更かしをした2人はそのまま泥のように眠った。

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