短編 (ページ3)

今日:21 hit、昨日:197 hit、合計:9,278 hit

sakamoto.s ページ3

阪本 × 同期夢主

新年度、誰もが以前の自分よりもっと素敵な自分になりたいと願う時期。だが、だがしかし、眼鏡が好きな私にとって眼鏡からコンタクトにデビューする人が多いこの時期は私にとってはとても嫌な時期だ。

｢おはようございま〜す…｣

気だるそうに楽屋に入ってきたのは私の同期のマユリカ阪本だ。
黒い髪に、モノクロのシンプルな服装。
ハマる人にはハマるであろう顔立ちに、朝だというのに主張している青髭。
阪本はたまに黒縁の眼鏡を掛けている。彼の程よく整った顔立ちをさらに引き立てていたのは、あの眼鏡だと私は思う。

｢なぁ、それやめろや｣

彼はいじっていたスマホから視線を引き剥がし、こちらに不満気な視線を向ける。

『それって何よ、それって』
｢いつもの眼鏡好き好きビーム、みたいなやつ｣
『そんなビーム出した記憶ないよ。ただ、この世界に存在する人類は眼鏡かけるべしって思ってるだけ』
｢変な宗教やんけ｣

彼は眉間の皺を深くし、怪訝そうな顔をする。

｢大体、眼鏡とったらイケメンとかあるやん。少女漫画的な｣
『あれはフィクション！あと、眼鏡なくてイケメンな人は、メガネあってもイケメンだから！眼鏡は加点アイテムなんで！100点の人も120点になるの！』
｢はいはい、分かった分かった｣
呆れたような顔をして再びスマホに視線を戻そうとする彼。
『ねぇ、今日は眼鏡掛けないの』
｢今日、眼鏡持ってきてへん…ちょｯ｣

スマホから視線を離すことなく答える彼に私が普段掛けている眼鏡を掛ける。

『うん、やっぱり眼鏡掛けてる阪本かっこいいな』

満足気に眼鏡を掛けた阪本を眺めていると、スタッフさんから呼ばれ阪本の元を離れた。

＿＿＿＿＿＿＿

｢いや〜、あれはあざといなぁ？｣
｢、辻さん、見てたんですか｣
｢俺も眼鏡掛けよっかな〜｣

と立ち去る辻さんを、いつもと度数が違って慣れない眼鏡を掛けたまま見送った。