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「…なんか、隼くん、絡まれてたし」
「…ああ?」
「隼くん、かっこいいから声掛けられるのもしょうがないのは分かってるんだけど…やっぱ嫌なものは嫌だし…」
「…」
「…こんな気持ちで隣にいていいのかな、なんて、思ったりして…、あと、若さに負けそうになった」
「はあ?」
はは、と乾いた笑いは彼に拾われることなく地面に落ちる。彼はどうも眉間に皺を寄せて考え込んでいるみたいだった。つらつらと言葉にしてみたはいいけど、あれ、なんかこれじゃあ私、まるで…。
「……なんかよく分かんねーけど、拗ねてんのか?A」
「…っえ、ち、違う…くないかも…?」
「どっちだよ」
ぶわわ、と顔に熱が篭る。分かってはいる、分かってはいるんだけど、彼に他の人からの好意が寄せられていると分かるとどうしようもなく不安になる。もしかしたらあっちの子の方が好みなんじゃないか、とか、私よりいい子で揺らいじゃうんじゃないか、とか。そんなもの考え出したらきりがない。
そんなようなことをぽつりぽつりと付け足していく。子供じゃないんだから、分別のある大人なんだから、彼にそういう気がないことも分かってるから、私はちゃんと割り切らなきゃいけない。だけどどうしたって心は勝手に黒い靄を作り出していく。
この歳で彼が話しかけられていただけで拗ねるなんて今更ながら恥ずかしくなり、飴を舐めて足元の石を蹴る。…今はどんなことをしたってそれはいじけている子供のようにしか見えない。
「ふっ」
「!?…隼くん、今、笑った?」
「笑ってねえけど」
「ちょっと、絶対笑ったじゃん」
「いや、可愛いな、お前」
「…………は、あ?」
唐突に彼からあまり言われ慣れていない言葉を聞き、思わず聞き返した。なんで、そんな言葉を。
くつくつと楽しげに笑う彼に私は唖然とするしかない。こんなに笑ってる彼はレアものだが、今はそんなこと気にしている場合ではない。
「な、何よ…」
「Aはもっと自信を持てよ。…俺は、お前だったらもっと求められてもいいと思ってる。…大体消極的すぎんだよ、なんで嫌ならあそこで声掛けねえ」
「だっ、だって!口ではあんなこと言ってても、もしかしたら内心ちょっと喜んでるかも、とか…」
「思わねーよ。そんなのお前が一番分かってんだろ」
「…わ、わかんないよ…」
「……面倒臭ぇな」
その言葉にびくりとする。それは、私が聞きたくなかった言葉。でも、こんなこと言ってはそう思われるのも仕方ない、かあ。
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フルリ(プロフ) - amyさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、長い間付き合って頂きありがとうございました!続編も、書かせて頂きますので、今後もぜひよろしくお願い致します…(//∇//)! (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - 三崎さん» コメントありがとうございます!少しでもこの作品が心に触れることが出来たのならこれ以上の嬉しいことはありません。続編のお声、ありがとうございます!ぜひ続けさせて頂きますので、どうぞまた、よろしくお願い致します…! (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - (´・ω・`)モカエルさん» コメントありがとうございます!是非、作らせて頂きますので続編もどうぞ、よろしくお願い致します! (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - 晴耕雨読さん» コメントありがとうございます。大好きと言って頂けてとても嬉しいです…!そして、リクエストと続編希望のお声ありがとうございます!もう暫く時間はかかりますが、作らせて頂くことにしました…!どうぞ、続編もよろしくお願い致します(//∇//) (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
amy(プロフ) - ここまでお疲れ様でした!いつも更新を楽しみにしていました。大好きな作品が今後も続くことを祈っています(^-^) (2018年5月14日 21時) (レス) id: 195e3fe04b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルリ | 作成日時:2018年4月2日 1時