お祭りのお話 ページ43
「隼くん!」
「!?」
「明日!空いてる!?」
ノックをした直後に返事も待たず、私は部屋が繋がっている方のドアを開けながら彼にそう問うた。彼は「ノックの意味ねーだろ、それ」と言いながらも理由を訊いてきた。明日、そう、明日は…。
「夏祭り、行こう!」
▽△
夏休みも中盤、私は蝉が煩い道を歩いていた。木陰の中でふと目に留まったポスター。立ち止まって見てみると、それはここら辺の神社で行われる夏祭りのお知らせだった。どうやら花火まで上がるらしい。花火かあ、ここ暫く見てなかったなあ、一緒に見るような人もいなかったし、暑い中外を出回るのはあまり好かない。音は聞こえてたりはしていたけどね。
…でも、隼くんとなら、行ってみたい。どうだろう、彼もわざわざ夏祭りに行くような人ではなさそうだけど…。あ、でも鷹くんがいるから一緒に行ってたりはしてたのかな。そんなことをつらつらと思いながら日付を見る。今週の土日。花火が上がるのは土曜日らしい。…誘うだけ、誘ってみよう。もし行かないって言われたら、お家でまったりしよう。暑さ的には変わらないしね。
と、言うわけで、誘ってみたのだが。彼の返事は意外にもあっさりとしたもので「別にいいけど」と普通に言われた。少し拍子抜けする程だ。すると次に出てくるのはまた更なる願望。ほら、人間って、欲望が尽きないから…。
「…もう一ついい?」
「あ?」
「…浴衣、着たいなー、なんて…」
「…」
「一回!今年だけでいいから!お願いします!」
「……しょうがねえな…」
「!!!ほ、ほんと!?」
「…俺が断りきれねーの知っててやってんだろ…」
その言葉にえへ、と笑う。前にも言った通り、彼は私のお願いには甘い。だって、どうしても見たいんだもの、隼くんの浴衣姿。着方分かんねーよ、と言っている彼にタイミング良くスマホが通知を知らせる。それを見た彼は押し黙り、私は何かあったのかと心配しながら大丈夫?と訊いた。
するとぽい、と私にスマホを投げながら大きな溜息をつく。慌てて受け取った画面を見るとどうやら静さんからで。メールの文面は「もし浴衣を着つけるようなことがあったら言いなさいな、私がそっちまで行ってやってあげるから」とのこと。
「…ふふ、心配ご無用だったね」
「…うるせ」
楽しみだね、と言うと素っ気ないながらも「ああ」と言う返事が返ってきた。私も、明日は友人に頼んで色々やってもらうつもりだ。可愛いって、思ってもらえるといいなあ。
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フルリ(プロフ) - amyさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、長い間付き合って頂きありがとうございました!続編も、書かせて頂きますので、今後もぜひよろしくお願い致します…(//∇//)! (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - 三崎さん» コメントありがとうございます!少しでもこの作品が心に触れることが出来たのならこれ以上の嬉しいことはありません。続編のお声、ありがとうございます!ぜひ続けさせて頂きますので、どうぞまた、よろしくお願い致します…! (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - (´・ω・`)モカエルさん» コメントありがとうございます!是非、作らせて頂きますので続編もどうぞ、よろしくお願い致します! (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - 晴耕雨読さん» コメントありがとうございます。大好きと言って頂けてとても嬉しいです…!そして、リクエストと続編希望のお声ありがとうございます!もう暫く時間はかかりますが、作らせて頂くことにしました…!どうぞ、続編もよろしくお願い致します(//∇//) (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
amy(プロフ) - ここまでお疲れ様でした!いつも更新を楽しみにしていました。大好きな作品が今後も続くことを祈っています(^-^) (2018年5月14日 21時) (レス) id: 195e3fe04b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルリ | 作成日時:2018年4月2日 1時