機嫌が悪い時のお話 ページ24
今日の隼くんはなぜかすこぶる機嫌が悪い。どうしたの?と聞いても何でもないの一点張り。何でもない訳ないじゃん、彼がそんな機嫌が悪いことなんて滅多に見ないので思わず物珍しく見つめてしまう。そうしたら顔面を大きな掌で軽く叩かれてしまいますます訳が分からなくなる。
「隼くん、前見えないよ」
「見えなくしてんだよ。こっち見んな」
「彼女に対する物言いじゃない!」
私なんかしたっけ、と思い出すが特に何かした覚えはない。大学と新たなバイト先の塾講師といつものアルバイトくらいしかしてないし。それとも学校で何かあったのだろうか。
それとなく聞いてみるがやはり原因は不明。心なしかその横顔はむくれた子供のようで、その神経を逆撫でしてしまうのは分かっていたけれど笑いが溢れてしまった。
「…何笑ってんだよ」
「ふふ、いや、何か子供みたいだなあって」
「…」
そういうと眉根を寄せ更に不機嫌になったことを示していた。あ、やば。そう思った時にはもう遅くて。
「ちょっごめっはやと、んんっ」
「…」
噛みつかれようなキスをされ酸素を奪われた。いつもより深いそれに否応なしに声と生理的な涙が出て、いつもより荒々しく口内を荒らされてされるがままになる。
酸素不足で頭がポーッとしていたところでようやく解放してもらえた。な、何だ今の…。
「子供はこんな可愛げがねぇことしねーだろ」
「は、あ…ッ、な、な…!」
ぐすぐすと洟を啜ると少しだけ機嫌が直ったようで、腕を引かれて抱き締められる。ごめん、なんて声が耳元で聞こえたけど絶対ごめんなんて思ってない、だって声が笑ってるもん。
「……どうしたの、ほんとに」
「…昨日、夜誰かと会ってたろ」
「…?」
昨夜、といえば塾講師のバイトだ。何かあったけっな、と記憶を掘り起こしてみると、そういえば帰りたまたま私と同じ教師志望のバイトさんに会ったなと気づいた。
見てたの?と訊くとたまたまコンビニ寄っていたら話し込んでいる私たちの姿を見たという。同じ夢を持つ者同士、話が合い暫く話していたのだが、もしかしてそれが原因?
「…カッコつかねーけど、不安なんだよ…。只でさえ歳上で、俺の知らない世界を見ていて」
そう言えば私も、いつだったか彼が誰かに取られるんじゃないかって不安になったな。それを思い出して彼の気持ちを理解する。
関係というものは目に見えないからたまに脆くなって、どうしようもなく不安に駆られるのだ。
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フルリ(プロフ) - amyさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、長い間付き合って頂きありがとうございました!続編も、書かせて頂きますので、今後もぜひよろしくお願い致します…(//∇//)! (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - 三崎さん» コメントありがとうございます!少しでもこの作品が心に触れることが出来たのならこれ以上の嬉しいことはありません。続編のお声、ありがとうございます!ぜひ続けさせて頂きますので、どうぞまた、よろしくお願い致します…! (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - (´・ω・`)モカエルさん» コメントありがとうございます!是非、作らせて頂きますので続編もどうぞ、よろしくお願い致します! (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - 晴耕雨読さん» コメントありがとうございます。大好きと言って頂けてとても嬉しいです…!そして、リクエストと続編希望のお声ありがとうございます!もう暫く時間はかかりますが、作らせて頂くことにしました…!どうぞ、続編もよろしくお願い致します(//∇//) (2018年5月15日 13時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
amy(プロフ) - ここまでお疲れ様でした!いつも更新を楽しみにしていました。大好きな作品が今後も続くことを祈っています(^-^) (2018年5月14日 21時) (レス) id: 195e3fe04b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルリ | 作成日時:2018年4月2日 1時